Intracranial volume segmentation for neurodegenerative populations using multicentre FLAIR MRI
Authors: Justin DiGregorio, Giordano Arezza, Adam Gibicar, et al.
Journal: Neuroimage: Reports, 2021;1:100006. doi: 10.1016/j.ynirp.2021.100006
この論文は、脳内の頭蓋内容積(ICV)をセグメンテーションする技術のうち、特にFLAIR MRI(Fluid-attenuated inversion recovery MRI)を用いた多施設データを扱うアルゴリズムの開発と評価について論じています。従来、T1重み付け画像が主にICV解析に使用されていましたが、FLAIR MRIが神経変性疾患や血管疾患において重要な役割を果たすことがわかっており、その単独利用の可能性が検討されています。
背景と目的
神経変性疾患の診断および進行モニタリングにおいて、脳内の異常部位の解析は欠かせません。しかし、ICV解析における既存の手法は通常、T1 MRIデータを基にしており、複数施設で取得された異なるパラメータや病理を含むFLAIR画像には適用が難しいとされています。本研究の目的は、FLAIR MRIに特化したICVセグメンテーションアルゴリズムを開発し、その性能を多施設データ上で検証することです。
方法
研究には、175件のFLAIR MRIデータ(8,317枚の画像)が使用されました。データは、アルツハイマー病、血管疾患、その他の認知症患者から収集され、多様な施設・スキャナで得られたものです。比較のために、伝統的なアルゴリズム2種とディープラーニングモデル8種を用いました。特に、性能評価にはDice係数(DSC)、Hausdorff距離(HD)、エクストラフラクション(EF)、および体積差(AVD)などの指標が使用され、一般化性能や病理への耐性も評価されました。
結果
10のアルゴリズムのうち、複数解像度U-Net(MultiResUNet)が最も優れた性能を示し、平均DSCが98%を超えました。他のCNNベースのアルゴリズム(U-Net, SC U-Net, Res U-Netなど)も高い精度を示し、特に脳周辺の解剖学的特徴や病理の違いにも適応できることが確認されました。既存の従来法と比較して、深層学習ベースの手法はスキャンデータのばらつきや疾患の影響を受けにくく、また測定の信頼性も高いことが示されました。
結論
本研究は、FLAIR MRIを用いたICVセグメンテーションが神経変性疾患の大規模研究において単独で有効に機能することを示しており、ディープラーニング技術が多施設データセットにおけるICV解析の信頼性と汎用性を向上させる可能性を示唆しています。この手法は、病理解析や臨床応用のための前処理技術として有望であり、特に多施設での一貫した自動解析ツールとして有用であると結論づけられています。