Comparison of Single-Plate and Double-Plate Osteosynthesis with Locking Plate Fixation for Distal Humeral Fracture in Older Adults
Authors: Yuji Tomori, Mitsuhiko Nanno, Tokifumi Majima
Journal: Journal of Nippon Medical School, 2022; 89(5):506-512. doi: 10.1272/jnms.JNMS.2022_89-510
この研究は、65歳以上の高齢患者における遠位上腕骨の顆上骨折に対して、シングルプレート固定とダブルプレート固定の臨床および放射線学的な治療転帰を比較し、適切な治療法を明らかにすることを目的としています。
背景
遠位上腕骨骨折は一般には稀ですが、骨粗鬆症の増加とともに高齢者においてその発生頻度が増加しています。ダブルプレート固定は、骨折部位に対して高い剛性と安定性を提供するためによく使用されますが、神経障害や関節拘縮のリスクもあります。一方で、シングルプレート固定は手術侵襲が少なく、合併症リスクを低減できる可能性があると考えられています。
方法
- 対象者:2002年から2019年に遠位上腕骨顆上骨折と診断され、手術を受けた39例の患者が対象となりました。シングルプレート(グループS)は11例、ダブルプレート(グループD)は17例が含まれました。
- 手術手技:グループSではONIプレートシステムを使用し、必要に応じて内側にカンセラススクリューを挿入。グループDでは内外両側にプレートを配置し、骨折部位の安定性を確保しました。
- 評価項目:術後の肘関節の可動域(ROM)、Mayo肘機能スコア(MEPS)、神経障害の有無などを評価しました。
結果
- 可動域:グループDは術後1日目からリハビリが開始でき、肘の屈曲角度の平均は127.4度、ROMアークは105度と良好な結果でした。一方、グループSでは2週間の固定が必要で、屈曲角度の平均は111.3度、ROMアークは88.2度と制限が見られました。
- 神経障害:尺骨神経障害はグループSの2例、グループDの9例に発生し、特にグループDで神経前方転位を行った症例に多く見られました。
- MEPS:グループSは平均89.1点、グループDは93.5点と、統計的な有意差はないものの、グループDのほうがやや良好な成績を示しました。
考察
シングルプレート固定は手術侵襲が少なく、合併症が少ない一方で、早期の関節可動域回復が難しい点が指摘されました。対して、ダブルプレート固定はより安定性が高く、早期のリハビリが可能で、肘の可動域も広がるため、高齢患者にとっては有望な選択肢とされました。ただし、尺骨神経の前方転位による神経障害のリスクが残るため、慎重な術前評価が重要です。
結論
高齢者の遠位上腕骨骨折に対して、ダブルプレート固定は安定性と早期の機能回復を提供するため、シングルプレートよりも適している可能性が示唆されました。