概要
筋強直性ジストロフィー1型(DM1)は、常染色体優性の遺伝形式を持つ筋ジストロフィーであり、DMPK遺伝子(ジストロフィア・ミオトニカ・プロテインキナーゼ)のCTG三塩基反復の不安定な拡大が原因です。この疾患は、脳、骨格筋、心筋に特に影響を及ぼし、拡張されたCTG反復を含む変異mRNAの毒性効果によると考えられています。
DM1の分子機構
項目 | 説明 |
---|---|
遺伝子異常 | DMPK遺伝子のCTG反復の拡大 |
影響を受ける臓器 | 脳、骨格筋、心筋 |
mRNAの異常 | 拡張されたCTG反復を含む変異mRNAが転写後に翻訳されず、核内に蓄積し、ヘアピン構造を形成する。 |
RNA結合タンパク質の捕捉 | 変異mRNAは、筋肉盲様タンパク質(MBNL)などのRNA結合タンパク質と結合し、それを捕捉する。 |
異常スプライシング | MBNLタンパク質の捕捉により、異常なmRNAスプライシングが引き起こされ、機能不全のタンパク質が生成される。 |
DM1の主な特徴
DM1の患者では、以下のような特徴的な症状や病態が現れます。これらの症状は、特に非分裂細胞(例:骨格筋細胞、心筋細胞、脳細胞)で進行しやすく、年齢とともに症状が悪化する傾向があります。
症状 | 説明 |
---|---|
筋強直 | 筋肉の硬直や弛緩困難(筋肉の収縮後、すぐに弛緩できない) |
筋力低下 | 主に顔面、首、四肢の遠位筋に影響 |
心筋症 | 心臓の伝導障害や心筋の弱化によるリスク |
認知機能低下 | 知的障害や精神的な問題 |
内分泌障害 | 糖尿病や不妊症などの内分泌系の問題 |
DM1における体細胞モザイク性と細胞分裂
DM1患者は、CTG反復の長さが体細胞モザイク性を示すため、細胞によって異なる長さのCTG反復を持ちます。特に非分裂細胞(例:骨格筋、心筋、脳細胞)では、CTG反復が他の細胞よりも長くなりやすく、変異mRNAの蓄積も進行します。このため、DM1の患者は年齢とともに症状が進行し、心臓伝導障害などの問題が現れることが多いです。
体細胞モザイク性と影響を受ける細胞
細胞 | 影響の程度 |
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骨格筋細胞 | CTG反復が特に長くなり、筋強直や筋力低下が進行しやすい。 |
心筋細胞 | 変異mRNAの蓄積が進行し、心臓伝導障害や心筋症が起こりやすい。 |
脳細胞 | 認知機能低下や精神的な症状が進行する可能性がある。 |
一方、分裂が活発な細胞(例:気道基底細胞、赤芽球、腸上皮細胞、骨芽細胞)では、CTG反復の安定性が高く、変異mRNAの蓄積が少ないため、DM1による影響が少ないとされています。
他の疾患との鑑別
DM1は、特に心筋や骨格筋の異常を示すことから、他の筋疾患や心疾患と区別することが重要です。
疾患 | 特徴 | DM1との違い |
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デュシェンヌ型筋ジストロフィー | X連鎖劣性遺伝で、小児期に筋力低下が進行。 | DM1は常染色体優性遺伝で、成人期に進行しやすい。 |
ベッカー型筋ジストロフィー | デュシェンヌ型より軽度で、筋力低下の進行が遅い。 | DM1は筋強直が特徴的で、進行に年齢依存性がある。 |
拡張型心筋症 | 心臓の機能不全が進行。 | DM1は心筋だけでなく、骨格筋や脳にも影響を及ぼす。 |
まとめ
筋強直性ジストロフィー1型(DM1)は、DMPK遺伝子のCTG三塩基反復による遺伝性疾患であり、変異mRNAの蓄積による異常スプライシングが主要な病態です。特に非分裂細胞である筋細胞、心筋細胞、脳細胞に影響を与え、年齢とともに症状が進行することが特徴です。