シャーガス病は、ラテンアメリカに特有の原虫感染症で、Trypanosoma cruzi(トリパノソーマ・クルージ)によって引き起こされます。この病気は、主にトリアトム虫(サシガメ)によって伝染します。
感染経路
- 媒介生物: Triatoma(サシガメ)
- 感染プロセス: サシガメは夜間に人間を刺して血を吸い、その後、刺した傷に病原体を含む糞を残すことで感染が成立します。
シャーガス病の進行段階
フェーズ | 期間・内容 | 症状・特徴 | 診断方法 |
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急性期 | 感染後8〜12週間 | – 多くの患者は無症状 – 一部の患者は発熱、倦怠感 – 接種部位に炎症・腫れ | 血液顕微鏡検査でトリポマスチゴートの検出 |
慢性期 | 急性期後の長期間 (数十年) | – 初期は無症状(「不顕性感染」) – 数十年後に心筋症や消化器症状が現れることあり | 血清学的検査(トリパノソーマ抗体の検出) |
慢性シャーガス心筋症
慢性シャーガス心筋症は、シャーガス病の最も一般的な合併症です。感染が心臓に影響を与えると、心臓の線維が破壊され、心筋症が進行します。
合併症 | 症状・リスク |
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両側心不全 | 心臓の右側・左側が共に機能不全となる |
心室性不整脈 | 心室での不整脈によるリズム異常 |
心室動脈瘤 | 心室壁の膨らみによる血栓形成・血栓塞栓症(脳卒中など) |
他の疾患との比較
疾患名 | 病原体 | 特徴 | 診断方法 |
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梅毒 | Treponema pallidum (細菌) | 上行大動脈瘤を引き起こす可能性 | 血清学検査、暗視野顕微鏡検査 |
ニューロシストセルコーシス | Taenia solium (豚条虫) | 脳内の石灰化病変による発作 | 画像検査、血清学検査 |
ライム病 | Borrelia burgdorferi (細菌) | 移動性紅斑、後に関節炎や脳症が発症 | 血清学検査 |
住血吸虫症 | Schistosoma (寄生虫) | 肝臓や腸での炎症・線維化を引き起こす | 糞便・尿中の卵の検出 |
まとめ
- シャーガス病は、ラテンアメリカに多く見られる原虫感染症で、特に田舎での住居にTriatoma虫が生息する地域で感染のリスクが高いです。
- 急性感染は無症状であることが多いですが、数十年後に心筋症や心室動脈瘤などの慢性合併症を引き起こすことがあります。