神経性食欲不振症(拒食症)について

神経性食欲不振症(Anorexia Nervosa, AN)は、著しい体重減少や体重増加に対する強い恐怖、歪んだ身体イメージを特徴とする摂食障害です。特に、体重や体形が自尊心に過度な影響を与える点が特徴です。以下に、ANの疫学や診断基準、合併症について説明します。

疫学

  • 主なリスク群: 白人、先進国の住民、アスリートやモデルなど、体型に関するプレッシャーが高い職業の人々。
  • 発症年齢: 平均18歳で発症。
  • 性別比: 女性の方が男性よりも発症リスクが高く、女性:男性比は10:1

DSM-5診断基準

  1. 著しく低い体重: BMIが一般的に18.5 kg/m²未満で、エネルギー摂取の制限がある。
  2. 体重増加への恐怖: 体重が増えることへの強い恐怖、または体重増加を避けようとする持続的な行動。
  3. 歪んだ身体イメージ: 自分の体重や体形に対する異常な認識、体重が自己評価に大きく影響する、または低体重による健康リスクを否定する傾向。

医学的合併症

神経性食欲不振症では、慢性的なエネルギー不足による身体的な合併症が多く見られます。

  • 骨粗鬆症: 低エストロゲン状態による骨密度の低下が進行し、骨折リスクが増加。
  • 無月経: エネルギー不足により、視床下部の機能が抑制され、ホルモン分泌が低下するため月経が停止
  • 産毛(ランゴ毛): 身体に現れる薄い体毛
  • 耳下腺肥大: binge・parge行動(過食・嘔吐)を繰り返す場合に見られることがあります。
  • 低血圧、低体温、徐脈: 慢性的な栄養不足により、代謝が低下。
  • 心萎縮と不整脈: 心臓の筋肉が萎縮し、不整脈が発生するリスクが高まります。

機能性視床下部無月経(FHA)

エネルギー不足が続くと、**GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)**の分泌が抑制され、低エストロゲン状態となります。これにより、無月経や骨粗鬆症が引き起こされ、低外傷性骨折のリスクが高まります。

他の疾患との違い

疾患名特徴
神経性過食症(Bulimia Nervosa)過食とパージ(嘔吐、下剤乱用)を繰り返すが、BMIは正常範囲。ANとは異なり、臨床的飢餓の合併症は少ない。
回避的/制限的食物摂取障害(ARFID)食事に対する興味の欠如や感覚過敏による食事回避。体重増加に対する恐怖や歪んだボディイメージは見られない。
セリアック病グルテン摂取による消化器症状や体重減少が見られるが、体重増加への恐怖や耳下腺肥大、徐脈などは伴わない。
甲状腺機能亢進症代謝亢進による体重減少や骨粗鬆症が見られるが、体重増加への恐怖や歪んだボディイメージは見られない。

教育目的

神経性食欲不振症は、著しく低い体重、体重増加への強い恐怖、歪んだボディイメージを特徴とします。他の摂食障害とは異なり、無月経、骨粗鬆症、徐脈などの進行した臨床的飢餓状態の合併症が見られる点が特徴です。


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