ビオチン(ビタミンB7)は、炭水化物、脂質、アミノ酸の代謝において不可欠な役割を果たす補因子です。特にカルボキシラーゼ酵素と結合し、CO₂キャリアとして機能します。以下の反応に重要な役割を担っています。
- ピルビン酸カルボキシラーゼ:ピルビン酸をオキサロ酢酸に変換し、糖新生をサポートします。
- 脂肪酸合成やアミノ酸代謝にも関与。
ビオチン欠乏症
ビオチン欠乏症は稀ですが、以下の状況で発生することがあります。
- 食生活の乱れ:栄養不良やバランスの取れていない食事。
- 生卵白の過剰摂取:卵白に含まれるアビジンはビオチンと強力に結合し、吸収を妨げます。
- 先天性ビオチン代謝障害:遺伝的な要因でビオチンの利用が低下します。
ビオチン欠乏症の症状
ビオチンが不足すると、以下のような非特異的な症状が現れることがあります。
- 精神状態の変化(例:疲労、うつ)
- 筋肉痛
- 食欲不振
- 黄斑性皮膚炎
- 乳酸アシドーシス:ピルビン酸から乳酸への代謝が増加し、代謝性アシドーシスが起こる。
他のビタミンとの比較
ビタミン | 役割 |
---|---|
ナイアシン(ビタミンB3) | ペントースリン酸経路でNADP⁺の形で作用し、リボース-5-リン酸やNADPHを生成。 |
チアミン(ビタミンB1) | ピルビン酸デヒドロゲナーゼに必要な補因子の一つ。 |
ピリドキサールリン酸(ビタミンB6) | アラニントランスアミナーゼの補因子として、アラニンとα-ケトグルタル酸の変換を触媒。 |
リボフラビン(ビタミンB2) | TCAサイクルでコハク酸デヒドロゲナーゼに補因子として必要。 |
教育目的
ビオチンはカルボキシラーゼ酵素に必須の補因子であり、糖新生や脂肪酸代謝など多くの重要な生化学反応に関与しています。特にピルビン酸からオキサロ酢酸への変換に不可欠で、ビオチン欠乏症は精神症状、皮膚の問題、代謝異常(乳酸アシドーシス)を引き起こします。