ミトコンドリア病の遺伝パターンと特徴

ミトコンドリア病は、母系遺伝(maternal inheritance)に基づいています。これは、ミトコンドリアDNA(mtDNA)がほぼ母親のみから受け継がれるためです。核DNAが両親から受け継がれるのとは異なり、mtDNAは母親から独占的に遺伝します。このため、ミトコンドリア病に関連する遺伝子変異は、母親から全ての子供に伝わりますが、父親からは遺伝しません。

ミトコンドリアDNAの変異とヘテロプラスミー

ミトコンドリアDNAの変異は、すべての子供(男性も女性も)に等しく遺伝しますが、**ヘテロプラスミー(heteroplasmy)**によって症状の重症度にばらつきが生じます。細胞には多数のミトコンドリアがあり、各ミトコンドリアには複数のmtDNAのコピーが含まれます。これらの中には、正常なmtDNAと変異したmtDNAが混在している場合があり、この割合が症状の重さを決定します。

  • ヘテロプラスミー: 正常なmtDNAと変異型mtDNAが混在している状態。各細胞や組織における変異型mtDNAの割合により、疾患の重症度が異なります。

影響を受けやすい組織

ミトコンドリアは酸化的リン酸化に関わり、ATP(エネルギー)の産生に不可欠です。そのため、エネルギー消費が大きい組織(例:脳、骨格筋、心臓)は、ミトコンドリア病の影響を特に受けやすいです。例として、MELAS(ミトコンドリア脳症、乳酸アシドーシス、脳卒中様エピソード)は、代表的なミトコンドリア病の一つです。

遺伝パターンに関する他の概念

用語説明
母系遺伝(maternal inheritance)ミトコンドリアDNAは母親からのみ遺伝します。男性と女性の子供に同様に影響しますが、父親からは遺伝しません。
遺伝的期待現象(anticipation)トリヌクレオチドリピート疾患(例:ハンチントン病)で見られ、次世代で発症年齢が早まり、重症度が増す現象。
遺伝的不均一性(genetic heterogeneity)同じ表現型でも異なる遺伝子変異が原因となる場合を指します。
遺伝的インプリンティング(genetic imprinting)対立遺伝子の一方(父または母)だけが発現し、もう一方は不活性化される現象(例:プラダー・ウィリー症候群)。
多面発現(pleiotropy)1つの遺伝子が複数の異なる組織や臓器に影響を与える現象(例:マルファン症候群におけるフィブリリン遺伝子の変異)。

教育目的

ミトコンドリア病は、母系遺伝により受け継がれ、症状の重症度はヘテロプラスミーの程度に依存します。これは、変異したmtDNAと正常なmtDNAの割合によって決まります。この遺伝パターンは、患者やその兄弟姉妹の症状の違いを説明します。


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