遺伝性血管性浮腫 (Hereditary Angioedema, HAE) は、C1阻害剤(C1インヒビター)の欠乏や機能不全によって引き起こされるまれな遺伝性疾患です。この疾患は、血液中のブラジキニンという物質の過剰生成により、皮膚や粘膜の腫れ(浮腫)が発生することが特徴です。アレルギー性浮腫と異なり、かゆみやじんましんを伴わないのが特徴です。
遺伝性血管性浮腫の特徴と症状
特徴・症状 | 説明 |
---|---|
発症時期 | 小児期または青年期に症状が現れることが多い |
腫れの部位 | 顔、四肢、消化管、喉頭などの皮膚および粘膜。特に顔の腫れが頻繁に見られる |
誘発要因 | 軽度の外傷(歯科治療など)、感情的ストレス、感染などが発作の引き金になる |
かゆみやじんましんの有無 | なし(アレルギー性浮腫とは異なり、かゆみやじんましんは伴わない) |
消化器症状 | 腸管が腫れると、腹痛や吐き気、下痢などの消化器症状を引き起こす |
喉頭浮腫のリスク | 喉頭が腫れると、呼吸困難を引き起こし、生命に関わる場合がある |
診断方法
遺伝性血管性浮腫の診断は、主に補体検査を通じて行われます。特に以下の項目が重要です。
検査項目 | 診断における役割 |
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C4レベルの低下 | C1阻害剤が機能しないために、C4が過剰に分解され、血中のC4レベルが低下するのが特徴 |
C1阻害剤の機能評価 | C1阻害剤の機能低下や欠乏が確認されることで、遺伝性血管性浮腫の診断が確定される |
他の関連疾患との違い
遺伝性血管性浮腫は、他の血管性浮腫や補体異常に関連する疾患と混同されやすいですが、それぞれの症状には違いがあります。
疾患名 | 原因 | 特徴的な症状 |
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アレルギー性血管性浮腫 | ヒスタミンの放出(アレルギー反応) | かゆみ、じんましん、アナフィラキシーショックを伴うことが多い |
ナイセリア感染症に対する感受性 | C8などの補体成分の欠損 | 細菌感染症に対する抵抗力が低下する |
選択的IgA欠損症 | IgA抗体の欠乏 | 輸血後にアナフィラキシーや気管支痙攣が起こる可能性がある |
治療と予防
遺伝性血管性浮腫の治療は、発作を予防し、発作が起こった際に迅速に対応することを目的としています。
- C1阻害剤の補充療法:C1阻害剤の欠乏を補う治療で、発作を抑える効果があります。
- ブラジキニン抑制薬:ブラジキニンの過剰生成を防ぎ、浮腫の発生を抑える薬剤が使用されます。
- 早期治療:喉頭浮腫のリスクがある場合、緊急の医療処置が必要です。発作時の迅速な対応が生命を守ります。
まとめ
遺伝性血管性浮腫は、C1阻害剤の機能不全による浮腫が特徴であり、特に顔や喉頭の腫れが重篤な場合があります。診断は補体検査によって行われ、適切な治療と予防策を講じることで、患者の生活の質を維持することが可能です。