代謝性アシドーシスについて

代謝性アシドーシスは、体内の酸と塩基のバランスが崩れて血液が過剰に酸性(pHが低くなる)になる状態を指します。通常、血液のpHは7.35~7.45の間に維持されていますが、代謝性アシドーシスでは7.35未満に下がります。これは、体内での酸の蓄積や、塩基の喪失によって引き起こされ、治療が遅れると重篤な症状を引き起こす可能性があります。

1. 原因

代謝性アシドーシスは、体内で酸が過剰に生成されたり、腎臓での酸の排泄が十分に行われなかったりすることが主な原因です。以下のような要因で発生します。

  • 腎不全: 腎臓が正常に機能しないと、体内の酸を十分に排出できず、酸が蓄積してアシドーシスを引き起こします。
  • 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA): 1型糖尿病の患者でインスリンが不足すると、体が脂肪を分解してエネルギーを得ようとし、その結果ケトン体が生成され、血液が酸性になります。
  • 乳酸アシドーシス: 酸素供給が不足する状態で、乳酸が過剰に生成されて体内に蓄積します。重度の感染症や心臓発作、ショック状態が原因で起こることがあります。
  • 重度の下痢: 腸から重炭酸塩(HCO₃⁻)が大量に失われ、血液が酸性に傾くことがあります。
  • 中毒: メタノール、エチレングリコール(不凍液)、またはサリチル酸(アスピリン)などの中毒が原因でアシドーシスが発生することがあります。

2. 症状

代謝性アシドーシスの症状は、体内のpHの低下により、さまざまな臓器やシステムに影響を与えます。主な症状は以下の通りです。

  • 倦怠感や疲労感: 酸性血液の影響でエネルギーの生成が低下し、持続的な倦怠感を感じます。
  • 呼吸の深さと速さが増加(クスマウル呼吸): 体が二酸化炭素(CO₂)を排出して酸性を補正しようとするため、呼吸が深く速くなります。
  • 意識障害: 酸性血液が脳に影響を与えるため、混乱や意識の低下が見られることがあります。
  • 吐き気や嘔吐: 消化器系の異常として、吐き気や嘔吐が発生することがあります。
  • 心臓の異常: 酸性血液は心筋に悪影響を与えるため、不整脈や血圧の低下が起こることがあります。
  • 頭痛: 血中のpHが低下することで、頭痛が起こることがあります。

3. 診断方法

代謝性アシドーシスの診断は、血液検査によって行われます。以下の項目が特に重要です。

  • 動脈血ガス分析(ABG): 血液のpH、二酸化炭素(CO₂)、重炭酸塩(HCO₃⁻)のレベルを測定し、アシドーシスの存在を確認します。pHが7.35未満で、HCO₃⁻が低下している場合、代謝性アシドーシスが示唆されます。
  • 血中電解質測定: カリウム、ナトリウム、クロールなどの電解質のバランスを確認し、原因を特定します。
  • 乳酸レベル: 乳酸アシドーシスが疑われる場合、血中の乳酸濃度を測定します。
  • 血糖値とケトン体の測定: 糖尿病性ケトアシドーシスの場合、血糖値が高く、ケトン体が検出されます。

4. 治療方法

代謝性アシドーシスの治療は、原因に応じて異なります。以下の方法が一般的です。

  • 原因疾患の治療: アシドーシスの原因となっている疾患(糖尿病、腎不全、感染症など)に対して適切な治療が行われます。例えば、糖尿病性ケトアシドーシスではインスリン療法、乳酸アシドーシスでは酸素投与や基礎疾患の治療が行われます。
  • 重炭酸塩(HCO₃⁻)の補充: アシドーシスが重度である場合、重炭酸塩を点滴で補充し、血液のpHを正常範囲に戻します。ただし、過剰な補正は危険なため、慎重に行われます。
  • 輸液療法: 脱水や電解質異常が原因の場合、補液によって体液と電解質バランスを整えます。
  • 透析: 腎不全が原因でアシドーシスが進行している場合、血液透析を行って酸や老廃物を除去することがあります。

5. 予防策

代謝性アシドーシスを予防するためには、以下のような対策が有効です。

  • 糖尿病の適切な管理: 血糖値を定期的にチェックし、インスリンや糖尿病薬を適切に使用して糖尿病性ケトアシドーシスを予防します。
  • 腎臓の健康維持: 腎臓の機能を定期的に評価し、腎不全の進行を防ぐための治療を行います。
  • 酸性物質の摂取を避ける: メタノールやエチレングリコールなどの有害な物質に曝露されないようにし、過剰な制酸剤やサリチル酸の使用を避けます。
  • 感染症予防: 重篤な感染症を予防することで、乳酸アシドーシスのリスクを軽減します。

まとめ

代謝性アシドーシスは、体内の酸が過剰に蓄積することで血液が酸性に傾き、さまざまな症状を引き起こす状態です。腎不全や糖尿病性ケトアシドーシス、乳酸アシドーシスが主な原因で、倦怠感や呼吸異常、意識障害などの症状が見られます。治療は原因に応じた対策が必要で、早期の診断と対応が重要です。適切な予防策を実施し、基礎疾患を管理することでアシドーシスを防ぐことが可能です。

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