小児上腕骨内側上顆骨折とは?

概要

小児上腕骨内側上顆骨折 は、肘の内側にある上腕骨内側上顆という部分で起こる骨折で、特に スポーツを行う子ども に多く見られます。内側上顆は、前腕を屈曲させる筋肉が付着する場所であり、肘の屈伸や投球動作などで大きな負荷がかかるため、骨折しやすい部位です。この骨折は、6歳から14歳 の子どもに多く発生し、野球や体操などのスポーツ活動中に起こることがよくあります。

原因

上腕骨内側上顆骨折は、肘関節に強い外力がかかったり、反復的な投球動作 などで繰り返し負担がかかることで発生します。骨折の主な原因は以下の通りです。

1. 転倒や外傷

  • 転倒時に手をついて倒れる ことで肘に強い外力がかかり、上腕骨内側上顆が損傷することがあります。これは日常的な事故やスポーツ中の転倒によって発生します。

2. スポーツの過剰使用

  • 特に 野球体操 などの競技で、繰り返し 肘に負担 がかかる動作を行うことで、肘の内側に過度な張力が生じ、骨折に至ることがあります。このような骨折は、長時間の投球練習や過度なトレーニングによって引き起こされることが多く、「リトルリーグ肘」とも呼ばれます。

3. 肘の脱臼に伴う骨折

  • 肘の 脱臼 に伴って内側上顆が骨折することもあります。脱臼が起こる際に、内側上顆が引っ張られて骨から離れることがあります。

症状

上腕骨内側上顆骨折の主な症状は以下の通りです。

  • 肘の痛み: 特に肘の内側に強い痛みが現れます。痛みは動かすと強まり、肘を曲げたり伸ばしたりすることが困難になります。
  • 腫れと内出血: 肘の内側に腫れが生じ、皮下出血が見られることがあります。
  • 可動域の制限: 骨折のため、肘を完全に伸ばすことや曲げることができなくなります。特に腕を伸ばそうとすると痛みが増します。
  • 変形: 骨折の程度が重い場合、肘の見た目に明らかな変形が見られることがあります。
  • 神経症状: 内側上顆に隣接する 尺骨神経 が損傷されると、手や指に しびれや麻痺 が生じることがあります。

診断

上腕骨内側上顆骨折の診断は、以下の手順で行われます。

1. 視診と触診

医師は、腫れや痛みの位置、肘の可動域制限を確認します。また、尺骨神経の損傷が疑われる場合、手や指の感覚や運動機能も評価されます。

2. X線検査

X線検査 は、骨折の正確な位置や程度を把握するために行われます。内側上顆の骨片がずれているかどうかや、関節内の損傷の有無を確認することができます。

3. MRIやCT検査

必要に応じて、MRICT検査 が行われることもあります。これらの検査は、関節や周囲の軟部組織の状態をより詳細に評価するために使用されます。

治療法

上腕骨内側上顆骨折の治療は、骨折の重症度や骨片のずれの有無によって異なります。軽度の骨折では保存療法が選択されますが、骨片が大きくずれている場合や神経損傷がある場合には手術が必要です。

1. 保存療法

骨片のずれが少ない場合、ギプスやスプリント を使用して肘を固定し、自然治癒を待ちます。この場合、以下の治療が行われます。

  • 整復: ずれが少ない骨折であれば、肘を正しい位置に整復してギプスで固定します。固定期間は 3~6週間 で、X線検査で癒合状況を定期的に確認します。
  • 安静: 固定中はスポーツや運動を避け、骨が癒合するまで安静を保つことが重要です。

2. 手術療法

骨片が大きくずれている場合や、尺骨神経が損傷している場合には、手術が必要です。手術では、以下の手技が行われます。

  • ピンやスクリューによる固定: 骨片を元の位置に戻し、金属ピンやスクリューを使って固定します。これにより、骨片が正しい位置で安定し、癒合が促進されます。
  • 尺骨神経の減圧手術: 神経が圧迫されている場合、神経を解放して感覚や運動機能の回復を図ります。

リハビリテーション

骨が癒合した後、リハビリテーション が必要です。リハビリの目標は、肘の可動域を回復させ、筋力を取り戻すことです。

  • 可動域訓練: 固定が解除された後、肘の動きを回復するための運動が行われます。肘を曲げたり伸ばしたりする練習を徐々に行い、可動域を広げます。
  • 筋力強化: 肘や前腕の筋力が低下しているため、筋力を強化するエクササイズが行われます。特にスポーツ活動に復帰する前には、十分な筋力を回復することが重要です。
  • スポーツ復帰プログラム: 野球などのスポーツに復帰する場合、無理をせず段階的に運動量を増やしていくプログラムが推奨されます。

合併症

適切に治療されても、上腕骨内側上顆骨折にはいくつかの合併症が発生する可能性があります。

  • 尺骨神経障害: 骨折時に尺骨神経が損傷されると、手や指に麻痺やしびれが残ることがあります。重度の場合、長期的な神経麻痺が続く可能性があります。
  • 肘の変形: 骨片が不完全に整復された場合、肘の変形が残り、肘の可動域が制限されることがあります。
  • 関節の硬縮: 治療後に肘関節の動きが硬くなる 関節硬縮 が発生することがあります。リハビリテーションで可動域を回復させることが重要です。

予後

小児の骨は成長力が高いため、早期に適切な治療が行われれば 良好な予後 が期待されます。ほとんどの子どもは、骨が正常に癒合し、元のスポーツ活動に問題なく復帰できることが多いです。しかし、合併症が発生した場合や、治療が遅れた場合には、長期的なリハビリや追加の治療が必要になることがあります。


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