上腕骨小頭骨端症(Panner病)とは?

概要

Panner病 は、肘関節にある上腕骨小頭(じょうわんこつしょうとう)という部分に発生する一時的な血流障害による骨軟骨壊死の一種です。特に 5歳から10歳 の成長期の子どもに多く見られ、スポーツや遊びによる反復的な負荷が原因となることが多いです。Panner病は、他の骨軟骨壊死と異なり、自然に治癒することが多いため、適切な治療と安静により、予後は通常良好です。

発生のメカニズム

Panner病は、上腕骨小頭(肘の外側に位置する上腕骨の一部)の一時的な血流障害によって引き起こされます。成長中の骨は血流に依存しており、特にスポーツや繰り返しの外力が加わると、血流が一時的に途絶え、骨の軟化や壊死が発生します。

この病気は、特に 野球や体操 など、肘に負担がかかる運動を行う子どもに多く見られます。運動によって肘の関節に強い力がかかることで、血流が阻害されることが考えられています。

症状

Panner病の主な症状は以下の通りです。

  • 肘の痛み: 特に肘の外側(上腕骨小頭部)に痛みがあり、運動や使用後に痛みが強くなります。
  • 腫れ: 肘の周囲に軽い腫れが見られることがあります。
  • 可動域の制限: 痛みのために肘を完全に伸ばしたり、曲げたりするのが難しくなることがあります。
  • 触診での痛み: 肘の外側を押すと痛みを感じることがあります。
  • 力の低下: 痛みのため、腕全体の力が低下し、物を持つことが困難になることがあります。

診断

Panner病は、臨床症状や画像診断を基に診断されます。

1. 視診・触診

医師は、肘の痛みの場所、腫れ、可動域の制限を確認します。肘の外側を押すと痛みが強くなる場合、Panner病が疑われます。

2. X線検査

X線検査 では、上腕骨小頭の骨端線が不整になっていることや、骨密度の低下が確認されます。初期段階では、骨が軟化し、X線で異常が見られないこともありますが、進行すると骨の変形が見られることがあります。

3. MRI検査

詳細な評価を行うために、MRI が使用されることがあります。MRIは、骨軟骨の血流障害や壊死の早期段階を検出するのに役立ちます。特に、軟骨や周囲の組織へのダメージを確認するために有効です。

治療

Panner病は、通常は保存療法によって自然に治癒することが多く、手術が必要になることは稀です。治療の目的は、症状の緩和と病気の進行を防ぐことです。

1. 安静

最も重要な治療は 安静 です。肘にかかる負担を減らすため、痛みが軽減するまで スポーツや激しい活動を制限 します。通常、3〜6か月の間、肘を使用しないようにすることが推奨されます。

2. ギプス固定

痛みが強い場合や、肘を安定させる必要がある場合、短期間の ギプス固定 が行われることがあります。これにより、肘を動かさずに安静を保つことができ、自然治癒を促進します。

3. 痛み止め

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) が、痛みや炎症を軽減するために処方されることがあります。これにより、日常生活の中での痛みを軽減し、活動の制限が容易になります。

4. リハビリテーション

痛みが軽減し、骨が回復してきたら、肘の 可動域訓練筋力強化運動 を徐々に開始します。これにより、肘の柔軟性と筋力を回復し、再発を防ぎます。スポーツに復帰する前に、完全な筋力と可動域が戻るようにリハビリを続けることが重要です。

合併症

Panner病は、適切に治療されれば良好な予後が期待できますが、放置すると以下のような合併症が発生する可能性があります。

  • 肘の変形: 治療が遅れたり、適切な治療が行われなかった場合、上腕骨小頭が変形し、肘の動きに支障をきたすことがあります。
  • 関節炎のリスク: 長期間にわたる関節の負担が原因で、成人期に 変形性関節症 を引き起こすリスクが高まることがあります。

予後

Panner病は、保存療法を適切に行うことで、通常は 数か月以内に自然に治癒 し、予後は良好です。多くの子どもが、痛みが治まり、肘の機能が完全に回復します。治癒後は、通常スポーツ活動にも問題なく復帰できるようになりますが、肘に過度の負担をかけないようにすることが再発を防ぐために重要です。


まとめ

Panner病は、成長期の子どもに発生する肘関節の一時的な骨軟骨壊死で、早期診断と適切な治療により、通常は自然に治癒します。痛みや腫れを感じた場合は、早期に医師の診察を受け、安静を保つことで肘関節の正常な成長と機能回復を促すことができます。


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