握力、脳構造、メンタルヘルスの関係性

Associations between grip strength, brain structure, and mentalhealth in > 40,000 participants from the UK Biobank.

Jiang R, Westwater ML, Noble S, Rosenblatt M, Dai W, Qi S, Sui J, Calhoun VD,
Scheinost D. BMC Med. 2022 Sep
9;20(1):286. doi: 10.1186/s12916-022-02490-2. PMID: 36076200; PMCID: PMC9461129.

背景

グリップ力(握力) は、筋力や全身の健康状態を測るためのシンプルかつ有効な指標です。特に高齢者では、グリップ力が認知機能の低下や精神疾患、さらには神経変性疾患のリスクと関係していることが多くの研究で示されています。本研究では、UKバイオバンク に登録された40,000人以上のデータを使用し、グリップ力とメンタルヘルス、さらには脳の構造との関連性を調査しました。

目的

本研究の目的は、グリップ力がメンタルヘルスや認知機能に与える影響を調べるとともに、脳の構造がこれらの関係をどのように媒介しているかを明らかにすることです。また、これにより、認知機能低下の早期予防や介入の可能性を探ることも目指しています。

方法

この研究では、UKバイオバンクのデータを使用し、40歳から70歳の40,000人以上の参加者を対象としました。グリップ力は専用のハンドダイナモメーターで測定され、脳構造はMRIを使用して評価されました。さらに、生活満足度や認知機能、うつや不安症状など、30種類以上のメンタルヘルス関連の指標が調査されました。

結果

  1. グリップ力とメンタルヘルス:
    • 強いグリップ力は、より良好な認知機能、生活満足度の向上、うつ症状や不安症状の減少と関連していました。
    • 特に女性では、グリップ力とメンタルヘルスの関連が男性よりも強く、性別による差が観察されました。
  2. 脳の構造とグリップ力:
    • グリップ力が強いほど、脳の灰白質(グレーマター)の量が多く、特に海馬や視床、側頭葉などの脳領域との関連が見られました。
    • 脳のこれらの領域は、認知機能やメンタルヘルスにも関連しており、脳構造がグリップ力とメンタルヘルスの関係を媒介していることが示唆されました。
  3. 縦断的な関連:
    • ベースラインのグリップ力は、9年後の認知機能のパフォーマンスに強く影響しており、逆にベースラインの認知機能が後のグリップ力に与える影響は比較的弱いことがわかりました。

結論

本研究は、グリップ力がメンタルヘルスや脳の健康に強く関連していることを示しています。特に、脳の灰白質の量がグリップ力と認知機能の関係を媒介している可能性があり、筋力トレーニングや身体活動の向上が脳の健康や認知機能の維持に役立つ可能性が示唆されました。

出典

Jiang R, Westwater ML, Noble S, Rosenblatt M, Dai W, Qi S, Sui J, Calhoun VD,
Scheinost D. Associations between grip strength, brain structure, and mental
health in > 40,000 participants from the UK Biobank. BMC Med. 2022 Sep
9;20(1):286. doi: 10.1186/s12916-022-02490-2. PMID: 36076200; PMCID: PMC9461129.


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