代謝性アルカローシスの診断と治療について

アルカローシス(Alkalosis)は、血液のpHが7.45以上となる状態を指します。本記事では、代謝性アルカローシスの原因、診断方法、治療についてわかりやすく解説します。


代謝性アルカローシスの特徴

代謝性アルカローシスは、血中の二酸化炭素分圧(PaCO2)の変化によって引き起こされる呼吸性アシドーシス(Respiratory Acidosis)とは異なり、主に以下のような原因によって生じます。

要因尿中塩化物(Cl-)の特徴治療方針
胃液吸引、重度の嘔吐低い(塩化物の一時的欠乏)塩化物補充(生理食塩水応答性)
ループ系またはサイアザイド系利尿薬一時的に高いが後に低下塩化物補充(生理食塩水応答性)
鉱質コルチコイド過剰(例: 原発性アルドステロン症)高い(塩化物補充無効)原因治療(例: ホルモン調節)
バーター症候群、ギッテルマン症候群高い(腎での塩化物再吸収障害)特殊治療

尿中塩化物測定の重要性

代謝性アルカローシスの原因が特定できない場合、体液量(Volume Status)の評価と尿中塩化物(Cl-)の測定が有効です。以下のように塩化物の状態によって原因の特定が可能です。

  • 尿中塩化物が低い場合
    塩化物欠乏が代謝性アルカローシスの主な原因です。胃液吸引や重度の嘔吐では塩酸(HCl)の喪失、利尿薬の過剰使用では塩化物喪失が起こります。これらは、生理食塩水による補充で治療が可能です。
  • 尿中塩化物が高い場合
    鉱質コルチコイド過剰や遺伝性腎疾患(例: バーター症候群、ギッテルマン症候群)が考えられます。この場合、塩化物補充では改善しないため、ホルモン調節や根本的な治療が必要です。

特殊な病態:バーター症候群とギッテルマン症候群

これらは腎の塩化物再吸収に関与するチャネルの異常が原因で、以下の特徴があります。

  • バーター症候群:腎のヘンレ係蹄上行脚に異常があり、低カリウム血症や代謝性アルカローシスを伴う。
  • ギッテルマン症候群:遠位尿細管に異常があり、低マグネシウム血症や低カルシウム尿症が特徴。

尿中塩化物が高い状態が持続しますが、これらの症候群は体液量が低下しているため一見矛盾しているように見えます。


まとめ

代謝性アルカローシスの診断と治療には、尿中塩化物(Cl-)の測定が非常に重要です。塩化物欠乏が一時的な場合には、生理食塩水の投与が効果的ですが、ホルモン異常や遺伝的要因による場合は異なる治療アプローチが必要です。原因に応じた適切な診断と治療が求められます。



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