Solitary Chondrosarcoma of the Right Ring Finger: A Case Report

Solitary Chondrosarcoma of the Right Ring Finger: A Case Report
Authors: Yuji Tomori, Norio Motoda, Ryu Tsunoda, Ryuji Ohashi, Yasuyuki Kitagawa, Tokifumi Majima
Journal: Journal of Nippon Medical School, 2022; 89(6):599-605. doi: 10.1272/jnms.JNMS.2022_89-602

この症例報告は、88歳男性の右手薬指に発生した孤立性軟骨肉腫の症例について述べています。患者は診断初期にはほとんど症状がなく、放置された状態で14年間にわたって腫瘍がゆっくりと成長しました。最終的に、腫瘍は大きくなり、骨の破壊性変化が進行したため、手指の切断(レイ切断)が実施されました。

症例概要

  • 初診時:患者は右薬指に軽度の疼痛と腫瘤を訴えて来院しました。X線検査で近位指骨の膨隆と透亮像が認められ、軟骨腫と診断されました。さらなる精密検査(MRI、CT、組織生検)が推奨されましたが、患者は無症状であることを理由に検査を拒否しました。
  • 経過観察:その後、腫瘍は8年にわたって成長を続け、最終的に疼痛と機能障害を引き起こすようになり、再び病院を受診しました。X線では骨皮質の破壊と腫瘤の拡大が確認され、軟骨肉腫の可能性が示唆されましたが、患者はこの時点でも積極的な治療を希望せず、さらに1年後に症状が悪化したため切断手術を受けることを決意しました。

手術と病理所見

手術によって切除された標本は、壊死を伴う白色腫瘤で、近位および中節骨に浸潤していました。病理検査では、腫瘍は軟骨腫瘍の典型的な葉状構造を呈し、骨小柱の包囲および皮下組織への浸潤が確認されました。組織学的に異形軟骨細胞と粘液様変化を伴う基質が認められ、低悪性度の軟骨肉腫(グレード2)と診断されました。

考察(Discussion)

手指の骨に発生する軟骨肉腫は稀であり、手指骨腫瘍の多くは良性の軟骨腫として診断されます。しかし、長期間にわたり経過観察されると、良性軟骨腫と悪性軟骨肉腫の鑑別が困難になる場合があります。特に骨皮質の破壊や急激な増殖が確認された場合、悪性を疑い、早急に積極的な治療を行うことが推奨されます。過去の文献でも、手指に発生する軟骨肉腫の転移の可能性は低いとされているものの、局所的な進行が激しいため、早期診断と切除が重要です。

結論

手指の軟骨腫様病変は高齢患者において慎重な経過観察が必要であり、急激な成長や骨の破壊性変化がみられる場合には、積極的な治療を検討すべきです。本症例は、長期間放置された結果として進行性の軟骨肉腫に移行した可能性を示唆しており、臨床的および放射線学的所見が治療方針決定において重要であることが強調されています。


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