Posteromedial Elbow Dislocation with Lateral Humeral Condylar Fracture in Children: Three Case Reports and a Literature Review
Authors: Yuji Tomori, Mitsuhiko Nanno, Shinro Takai
Journal: Medicine, 2018; 97(36):e12182. doi: 10.1097/MD.0000000000012182
この症例報告は、小児における非常に稀な肘の後内側脱臼と外側上顆骨折の同時発生について、3例の治療および転帰を報告し、文献レビューを通じて治療戦略の考察を行っています。
症例報告
- 症例1: 1歳男児が交通事故で肘の後内側脱臼およびMilch I型の外側上顆骨折を負いました。徒手整復後も不安定性が残り、関節鏡下で開放整復およびピン固定を行いましたが、最終的に肘に顕著な内反変形が残り、整容面での転帰は不良と評価されました。
- 症例2: 7歳男児が転倒によって左肘を負傷し、当初は骨端分離と診断されました。最終的にMilch II型の外側上顆骨折と判明し、後方アプローチでの開放整復およびピン固定を行い、肘の機能回復は良好で、形態的にも満足な結果が得られました。
- 症例3: 9歳女児が遊具からの落下により肘を損傷し、Milch I型骨折と診断され、後外側アプローチでの整復と内固定が行われましたが、肘に内反変形が残り、整容面での結果は不良とされました。
診断と治療
肘の脱臼と外側上顆骨折は診断が難しく、特に軟骨の構造や骨化中心が遅れている小児では、標準的なX線画像では骨折や脱臼の識別が困難です。症例1と3では術前の関節造影やCTが有用であった一方で、症例2は初診時に誤診されていました。
考察(Discussion)
本研究では、Milch I型およびII型における適切な整復アプローチの違いについて検討しています。特にMilch I型の骨折では関節面が前側に位置するため、前外側アプローチがより適している可能性が示唆されました。これは、後方や後外側アプローチでは前側の骨片の整復が不完全になりやすく、整容面での転帰に影響を与えることがあるためです。
また、本症例報告は文献レビューと併せて、肘の脱臼とLCFを伴う症例での誤診や転帰不良が発生しやすい点を指摘しています。これにより、CTやMRIを用いた精密な術前評価の重要性が強調され、特に解剖学的整復を達成するためには前外側アプローチが最適な手技である可能性が示唆されています。
結論
肘の後内側脱臼と外側上顆骨折を伴う症例では、解剖学的整復が満足な転帰を得るために不可欠であり、術前評価を通じて適切な手術アプローチを選択することが推奨されます。特にMilch I型には前外側アプローチが適切と考えられ、本研究はこのアプローチの有用性と術前評価の重要性を提唱しています。