Purulent Flexor Tendon Rupture of the Hand due to Mycobacterium abscessus Infection: A Case Report and Review of the Literature
Authors: Yuji Tomori, Toru Mochizuki, Hiroko Ohno, Mitsuhiko Nanno, Tokifumi Majima
Journal: Journal of Nippon Medical School, 2022; 89(3):347-354. doi: 10.1272/jnms.JNMS.2022_89-110
この症例報告は、非結核性抗酸菌であるMycobacterium abscessusによる手の屈筋腱化膿性破裂の稀な症例を紹介し、文献レビューを通じて類似症例との比較を行っています。
症例概要
- 患者:76歳男性、糖尿病既往あり。
- 初診時:患者は左手第4指の痛み、腫脹、および発赤を訴えて受診しました。MRI検査で腱周囲の膿瘍形成が確認されました。既往歴には、別の医療機関での腱鞘切開術後に腱鞘炎が持続していたことが含まれ、外部からの汚染も疑われました。
- 治療経過:診断の遅れにより感染が進行し、抗生物質治療と手術が行われました。手術では、化膿性腱鞘炎と壊死組織を除去し、抗酸菌培養によってM. abscessusが確認されました。
診断と治療
- 診断:診断には、通常の抗酸菌染色と培養が用いられましたが、M. abscessusは培養に長期間を要するため、迅速な同定にはDNAハイブリダイゼーション法も併用されました。
- 治療方法:治療は徹底的な壊死組織のデブリドマンと、クラリスロマイシンおよびレボフロキサシンの併用療法が主に用いられました。その後、人工腱移植を行い、屈筋腱の再建を段階的に進めました。最終的に、腱機能の80%以上が回復し、患者は日常生活に復帰しました。
考察(Discussion)
M. abscessusは、手術や魚介類との接触が原因で感染することがあり、免疫抑制患者や糖尿病患者で重篤化しやすい特徴があります。手術後や外傷による感染が多く、化膿性腱鞘炎が進行すると腱の壊死や破裂のリスクが高まります。治療には、感染部位の外科的除去と多剤併用療法が推奨され、早期診断が重要です。
本症例は、診断遅延によりM. abscessus感染が進行した結果、屈筋腱の破裂を招いた稀な例であり、同様の症例に対する治療指針を示しています。