新版 サードカルチャーキッズ 国際移動する子どもたち

著:デビッド・C. ポロック
著:ルース=ヴァン・リーケン
著:マイケル・V. ポロック

紙版

「Third Culture Kids(サード・カルチャー・キッズ、TCK)」とは、異文化間で育った子どもたちを指す言葉です。具体的には、親の仕事や家庭の事情で異なる国や文化圏で成長する子どもたちが該当します。例えば、日本人の親を持ちつつも海外で育つ子どもや、複数の国で生活を経験する子どもがこれにあたります。彼らは家庭内での文化(親の文化)と生活圏での文化(住んでいる国の文化)の両方に接するため、2つの文化が融合した「第3の文化」の中で育つと考えられており、「Third Culture Kids」と呼ばれるのです。

この記事では、TCKが育つ環境の利点と欠点について詳しく解説します。

Third Culture Kidsの利点

  1. 文化的な多様性に対する理解が深い
    TCKは、幼少期から異文化に接する機会が多いため、自然と多文化に対する理解や適応力が高まります。これは異なる文化を持つ人々への共感や、文化的な違いに対する柔軟な思考を養うことにもつながります。多様な価値観や考え方を尊重する力は、グローバル化が進む現代社会で大いに役立ちます。
  2. 語学力の向上
    異なる言語環境で育つことで、TCKは自然と複数の言語を習得することができます。母国語と現地語、さらに英語などを日常的に使い分けるケースも多く、バイリンガルやマルチリンガルとしてのスキルが身につきます。語学力が高いことは、将来的に国際的なキャリアを築く際の強力な武器となります。
  3. 柔軟な思考と適応力
    新しい環境や価値観に対する適応力が自然と鍛えられるのもTCKの特徴です。異文化間の違いや多様な人々とのコミュニケーションを通じて柔軟な思考が養われ、困難な状況や未知の環境でも迅速に適応する力を持っています。こうしたスキルは、急速に変化する現代社会においても大きなメリットです。
  4. 広い視野と国際的な視点
    異なる国や文化に接する経験から、TCKは一国や一文化に縛られない広い視野を持つことが多いです。自国と他国を客観的に見ることができ、国際的な問題や多文化共生についても敏感であるため、グローバルな視点を持って物事を判断できるようになります。

Third Culture Kidsの欠点

  1. アイデンティティの混乱
    TCKは、複数の文化にまたがる環境で育つため、「自分はどの文化の人なのか」というアイデンティティの悩みを抱えやすいです。家庭では親の文化、学校では現地の文化といった複数の文化に適応しながら成長することで、どこにも「完全に属している」という感覚を持ちづらいことがあります。
  2. 定住感の欠如
    異なる場所に何度も引っ越すことで「どこが自分の故郷か」という感覚を持ちづらくなりがちです。TCKにとって、定住という概念が薄いため、どこかに「根を張る」ことに対する不安や、帰属意識の欠如を感じる場合があります。このような感覚は、成人後の生活にも影響し、定住せずに短期的な移動を好む傾向に繋がることがあります。
  3. 他者との違いに対する孤独感
    幼少期から異文化での生活を送ることで、現地の文化や他の子どもたちとの違いを強く感じる場面もあります。特に帰国後に現地の文化になじみきれないことが多く、「周囲と異なる自分」に対する孤独感を抱くケースも少なくありません。この孤独感は、長期的な心のケアが必要な場合もあります。
  4. 安定した人間関係の築きにくさ
    何度も転居や新しい環境に移行することが多いため、TCKは一つの場所で長期間にわたる人間関係を築く機会が少ないことがあります。特に、友人関係においても一時的なものに終わることが多く、信頼関係を深めるのが難しいと感じることもあります。

TCKの育成において重要なサポート

TCKは、文化的に豊かな環境で成長する反面、アイデンティティの混乱や孤独感を抱きやすい傾向があるため、周囲のサポートが非常に重要です。家庭や教育現場でのサポートが、TCKの成長に大きく影響を与えます。

  • 家族の理解とサポート
    親がTCKの特有の悩みに対して理解を示し、子どもと積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。特にアイデンティティに関する悩みを共有し、サポートすることで、TCKは自己肯定感を高めることができます。
  • 異文化教育の充実
    学校や地域社会での異文化教育や、同じ境遇の子どもたちと交流できる機会を設けることも有効です。同じTCKの友人や家族とつながることで、「自分だけが特別ではない」という安心感を得られるため、アイデンティティの混乱や孤独感を軽減する手助けになります。

まとめ

Third Culture Kidsは、グローバル化が進む中で注目される存在です。彼らの持つ多様性への理解や語学力、柔軟な思考力は大きな利点であり、将来的な可能性も豊かです。一方で、アイデンティティの混乱や孤独感といった課題も存在します。親や教育機関がTCKの特性を理解し、適切にサポートすることで、TCKの長所をさらに伸ばし、健全な成長を支えることができるでしょう。

Third Culture Kidsは、グローバル化が進む中で注目される存在です。彼らの持つ多様性への理解や語学力、柔軟な思考力は大きな利点であり、将来的な可能性も豊かです。一方で、アイデンティティの混乱や孤独感といった課題も存在します。親や教育機関がTCKの特性を理解し、適切にサポートすることで、TCKの長所をさらに伸ばし、健全な成長を支えることができるでしょう。


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