細菌性髄膜炎(Bacterial Meningitis)は、細菌による脳と脊髄を覆う膜(髄膜)の感染症で、特に乳幼児において重篤な疾患です。生後1か月を超えた乳児では、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)や髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)が最も一般的な原因菌です。
乳児の細菌性髄膜炎の症状
乳児における細菌性髄膜炎の症状は、年長の子供や成人と異なり、特異的ではないことが多いです。例えば、頭痛や嘔吐、意識障害といった頭蓋内圧亢進(Increased Intracranial Pressure, ICP)の典型的な症状が見られないことがあります。その代わり、次のような症状が見られることがあります。
症状 | 説明 |
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発熱(Fever) | 体温が上昇し、感染の兆候を示す。 |
眠気(Lethargy) | 活力が低下し、眠そうにしている。 |
機嫌が悪い(Inconsolableness) | 泣き止まず、落ち着かせることが難しい。 |
授乳が困難(Poor Feeding) | 授乳を拒否する、または授乳が困難になる。 |
大泉門の膨隆(Bulging Fontanelle) | 大泉門が膨らみ、頭蓋内圧亢進を示唆する。 |
細菌性髄膜炎の診断と治療
細菌性髄膜炎が疑われる場合、診断と治療は迅速に行われる必要があります。最初のステップは血液培養(Blood Culture)を行い、病原菌を特定することです。その後、頭蓋内圧亢進のリスクが低い場合は腰椎穿刺(Lumbar Puncture, LP)を行い、髄液(Cerebrospinal Fluid, CSF)を採取して病原菌を特定します。髄液検査を行うことで、原因となる細菌を特定し、より狭域スペクトル抗生物質(Narrow-spectrum Antibiotics)の使用が可能になります。
診断・治療ステップ | 説明 |
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血液培養(Blood Culture) | 最初に行い、細菌を特定するための重要なステップ。 |
腰椎穿刺(Lumbar Puncture) | 頭蓋内圧亢進のリスクがない場合に行い、髄液を採取して病原菌を特定。 |
抗生物質治療(Antibiotic Therapy) | 第三世代セフェム系抗生物質とバンコマイシンを使用。 |
使用される抗生物質
細菌性髄膜炎の治療では、以下の抗生物質が使用されます。
抗生物質 | 説明 |
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第三世代セフェム系(Ceftriaxone, Cefotaxime) | 肺炎球菌や髄膜炎菌に有効な抗生物質。 |
バンコマイシン(Vancomycin) | セフェム系抗生物質に耐性を持つ肺炎球菌に対して有効。 |
大泉門の開閉と頭部CTの必要性
乳児における細菌性髄膜炎の診断では、大泉門(前頭部の柔らかい部分)が開いている場合、頭蓋内圧亢進のリスクが低いため、通常は頭部CT(Computed Tomography)を行わずに腰椎穿刺が優先されます。これは、大泉門が自然の「ポップオフバルブ」として機能し、圧力を逃がすためです。しかし、大泉門が閉じている場合や神経症状の悪化が急速に進行している場合は、CT検査を先に行い、脳ヘルニアのリスクを排除する必要があります。
大泉門の状態 | 診断の流れ |
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開いている(Open Fontanelle) | 頭部CTを行わずに、腰椎穿刺を優先して行う。 |
閉じている(Closed Fontanelle) | 頭部CTを行い、脳ヘルニアのリスクを確認した後に腰椎穿刺を行う。 |
まとめ
乳児の細菌性髄膜炎は、発熱、機嫌の悪さ、授乳困難、大泉門の膨隆などの非特異的な症状で現れます。大泉門が開いている場合は脳ヘルニアのリスクが低いため、頭部CT検査を行わずに腰椎穿刺を行い、迅速に抗生物質治療を開始します。