Strongyloides stercoralis感染症の病態と診断方法

Strongyloides stercoralis(ストロングイロイデス・ステルコラリス)は、東南アジア、アフリカ、太平洋諸国に広く分布する回虫(ラウンドワーム)です。感染は、人糞で汚染された土壌中にいる感染性のフィラリア型幼虫(filariform larvae)が皮膚と接触することで始まります(例:裸足で歩くことなど)。

Strongyloides stercoralisの感染経路

  1. 皮膚からの侵入:感染性の幼虫は皮膚を貫通し、血流やリンパ管を通って肺に移動します。
  2. 肺から腸への移行:幼虫は肺胞に入り、気管支を上昇し、最終的に嚥下されて消化管へ移動します。
  3. 腸内での成熟:幼虫は小腸の粘膜内で成熟し、成虫が産卵します。この卵は腸管内で孵化し、ラブディチス型幼虫(rhabditiform larvae)になります。
  4. 排泄または自己感染:ラブディチス型幼虫は便とともに排泄されるか、あるいはフィラリア型幼虫に変わり、腸粘膜や肛門周囲の皮膚を通して自己感染(autoinoculation)を引き起こすことがあります。

臨床症状

  • 多くの患者は無症状ですが、以下のような症状が現れることがあります。
  • 呼吸器症状:呼吸困難、喘鳴、乾いた咳など
  • 消化器症状:便秘、下痢、腹痛など
  • 皮膚症状:自己感染による皮膚下のフィラリア型幼虫の移動による線状の痒みを伴う紅斑(larva currens)が太ももや臀部に見られることがあります。

診断

  • 便検査:診断は、便中のrhabditiform(ラブディチス型)幼虫の検出が基本です。卵や成虫は通常、腸の生検でのみ確認されます。
  • 血清学的検査S. stercoralisのIgG抗体検査が補助的に使われますが、これは現在の感染または過去の感染のいずれかを示す可能性があります。IgGは感染後も長期間残るため、活動性の感染診断には便中の幼虫の確認が必要です。

Strongyloides stercoralisと他の寄生虫感染症の比較表

寄生虫感染経路主な症状診断方法
Strongyloides stercoralis幼虫が皮膚を貫通し、肺を経て腸へ移動呼吸器症状、消化器症状、線状紅斑便中のラブディチス型幼虫の確認
エキノコッカス(Echinococcus)動物(犬、羊)の寄生虫による感染肝臓の嚢胞、肺症状肝臓の超音波や血清検査による嚢胞の確認
Enterobius vermicularis夜間に肛門周囲に卵を産み付ける肛門周囲のかゆみセロハンテープ法で卵を検出
腸内条虫(Taenia solium)汚染された食物を摂取無症状が多いが、消化不良や栄養失調がみられることも便中の条虫片(プログロチッド)の検出
原虫感染(Giardia intestinalis、Entamoeba histolyticaなど)汚染された水や食物を摂取下痢などの消化器症状便中のトロフォゾイトや嚢子の確認

まとめ

Strongyloides stercoralisは、皮膚から侵入し、肺を経て腸で成熟する回虫で、便中のラブディチス型幼虫の確認が活動性感染の診断に重要です。主に熱帯や亜熱帯地域で見られ、呼吸器および消化器の症状を引き起こすことがあります。


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