2型糖尿病(Type 2 diabetes mellitus)の治療には、血糖値をコントロールするために非インスリンの薬剤がよく使用されます。これらの薬剤は、インスリン分泌を促進したり、血糖値を下げる多様なメカニズムを持っています。本記事では、代表的な非インスリン糖尿病治療薬のメカニズム、効果、および副作用について解説します。
主な非インスリン糖尿病治療薬の比較表
薬剤 | 作用機序 | 主な副作用 |
---|---|---|
スルホニル尿素薬(Sulfonylureas) | β細胞カリウムATPチャネルを阻害し、インスリン分泌を促進 | 低血糖、体重増加 |
ビグアナイド(Metformin) | 肝臓の糖新生を抑制し、末梢のグルコース取り込みを増加 | 下痢、乳酸アシドーシス、軽度の体重減少 |
チアゾリジンジオン(Thiazolidinediones) | PPAR-γ活性化によりインスリン抵抗性を低下 | 体液貯留、心不全、体重増加 |
GLP-1作動薬(GLP-1 agonists) | インスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制、胃排出遅延 | 膵炎、体重減少 |
DPP-4阻害薬(DPP-4 inhibitors) | 内因性GLP-1およびGIPを増加 | 鼻咽頭炎 |
SGLT-2阻害薬(SGLT-2 inhibitors) | 腎臓でのグルコース排泄を増加 | 尿路感染症、低血圧、体重減少 |
1. スルホニル尿素薬(Sulfonylureas)
スルホニル尿素薬は、膵臓のβ細胞に作用し、ATP依存性カリウムチャネルを阻害することで細胞膜を脱分極させ、カルシウムチャネルを開くことにより、インスリン分泌を促進します。この効果は血糖値に依存せずに持続するため、特に空腹時や食事を飛ばした場合に低血糖のリスクが高くなります。
主な副作用
- 低血糖:食事を取らない場合や過剰投与時に特にリスクが高まります。
- 体重増加:インスリン分泌の増加により、体重が増えることがあります。
2. ビグアナイド(Metformin)
メトホルミン(Metformin)は、肝臓での糖新生を抑制し、同時に末梢のグルコース取り込みを増やすことで血糖値を下げます。これによりインスリン感受性が改善され、低血糖のリスクが少ないのが特徴です。
主な副作用
- 下痢:最も一般的な副作用で、服用初期に見られることが多いです。
- 乳酸アシドーシス:まれですが、特に腎機能障害のある患者で注意が必要です。
- 軽度の体重減少:体重が増えないため、肥満患者に有効です。
3. チアゾリジンジオン(Thiazolidinediones)
ピオグリタゾン(Pioglitazone)などのチアゾリジンジオンは、PPAR-γ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)を活性化し、インスリン抵抗性を低下させます。
主な副作用
- 体液貯留・心不全:体液の貯留が原因で心不全のリスクが高まります。
- 体重増加:脂肪細胞の増加により体重が増えることがあります。
4. GLP-1作動薬(GLP-1 agonists)
エキセナチド(Exenatide)やリラグルチド(Liraglutide)などのGLP-1作動薬は、食事摂取後にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制する効果があります。また、胃の排出を遅らせることで血糖の急激な上昇を防ぎます。
主な副作用
- 膵炎:まれに膵炎のリスクが報告されています。
- 体重減少:食欲の低下や胃排出の遅延によって体重が減少することが多いです。
5. DPP-4阻害薬(DPP-4 inhibitors)
シタグリプチン(Sitagliptin)やサキサグリプチン(Saxagliptin)は、内因性のGLP-1とGIPを増加させ、食事後のインスリン分泌を増強します。
主な副作用
- 鼻咽頭炎:軽度の副作用として、風邪のような症状が現れることがあります。
6. SGLT-2阻害薬(SGLT-2 inhibitors)
カナグリフロジン(Canagliflozin)やダパグリフロジン(Dapagliflozin)などのSGLT-2阻害薬は、腎臓でのグルコース再吸収を抑制し、尿中に排泄させることで血糖を下げます。
主な副作用
- 尿路感染症:尿中の糖分が増えるため、尿路感染症のリスクが高まります。
- 低血圧:水分の排出が増えるため、低血圧が起こることがあります。
- 体重減少:余分なグルコースの排泄により体重が減少することがあります。
まとめ
2型糖尿病の治療には、複数の非インスリン薬があり、それぞれ異なる作用機序と副作用を持っています。患者の病態や生活習慣に合わせて適切な薬剤を選択することが重要です。特に、低血糖や体重増加のリスクに注意が必要な場合には、スルホニル尿素薬の使用に慎重になる必要があります。