全身性硬化症(Systemic sclerosis, SS)は、強皮症(Scleroderma)とも呼ばれる自己免疫疾患で、複数の臓器にわたる線維化(Fibrosis)を特徴とします。この疾患では、免疫系と血管系の異常が相互に作用し、過剰な線維化と血管障害を引き起こします。この記事では、SSの病態や主要な症状について説明し、表を使って理解しやすくまとめます。
全身性硬化症の病態生理
SSの発症には、以下の3つの主要な細胞が関与しています。
◎血管内皮細胞(Endothelial cells)
- エンドセリン1(Endothelin 1)を過剰に産生し、血管収縮を引き起こします。
- 接着分子の発現を増加させ、リンパ球が組織に移行しやすくなります。
◎Tリンパ球(T lymphocytes)
- 組織に移行し、サイトカインを放出して線維芽細胞を活性化させます。
◎線維芽細胞(Fibroblasts)
- 大量のコラーゲンや基質を産生し、皮膚や臓器の硬化を促進します。
SSの主な症状
SSの初期症状として、指の腫れや軽度のかゆみが現れることがあります。進行すると、以下のような症状が見られます。
- 皮膚の硬化(Sclerodactyly): 指や手の皮膚が厚く硬くなる
- 皮膚潰瘍(Dermal ulcers): 皮膚が損傷し、潰瘍が形成される
- 爪の萎縮(Nail atrophy): 爪が薄くなる、または剥がれ落ちる
- 石灰沈着(Calcinosis): 皮膚や筋肉にカルシウムが沈着する
細胞 | 役割 | 結果 |
---|---|---|
血管内皮細胞 | エンドセリン1産生、接着分子の発現増加 | 血管収縮、リンパ球の組織移行 |
Tリンパ球 | サイトカイン産生 | 線維芽細胞の活性化 |
線維芽細胞 | コラーゲンや基質の産生 | 皮膚や臓器の硬化 |
SSの診断と鑑別診断
診断
SSは、典型的な症状や検査所見(抗核抗体、抗Scl-70抗体)に基づいて診断されます。特に指や手の皮膚硬化、潰瘍、石灰沈着などが特徴的です。
鑑別診断
他の皮膚疾患も類似の症状を呈することがありますが、SSは特有の皮膚硬化や潰瘍が見られます。以下は主な鑑別疾患です。
- 乾癬(Psoriasis): 鱗状の発疹が特徴的で、皮膚の硬化や潰瘍は伴わない。
- 結核感染症(Tuberculosis): 結節や斑点が見られますが、皮膚の硬化は一般的ではありません。
- 蕁麻疹(Urticaria): 急性の紅斑性膨疹が現れ、慢性的な皮膚硬化や潰瘍は伴わない。
まとめ
全身性硬化症(SS)は、血管内皮細胞、Tリンパ球、線維芽細胞の相互作用によって引き起こされる線維化疾患です。特に皮膚の硬化や潰瘍、爪の萎縮などが特徴であり、適切な鑑別診断と治療が必要です。
要点 | SSの特徴 |
---|---|
病態 | 血管内皮細胞、Tリンパ球、線維芽細胞の相互作用により、コラーゲン産生と線維化が進行する |
症状 | 指の腫れ、皮膚硬化、潰瘍、爪の萎縮、石灰沈着 |
鑑別診断 | 乾癬、結核感染症、蕁麻疹 |