X連鎖無ガンマグロブリン血症(X-linked agammaglobulinemia, XLA)は、免疫系の異常によって引き起こされる遺伝性疾患です。この疾患は、ブルトンチロシンキナーゼ(Bruton tyrosine kinase, BTK)遺伝子の変異が原因で、骨髄内の前B細胞が成熟B細胞に分化できなくなることにより発症します。成熟したB細胞は、正常な免疫機能に必要な免疫グロブリン(抗体)を産生する役割がありますが、XLAではこの過程が阻害され、免疫不全を引き起こします。
XLAの症状と診断
XLAの患者では、免疫グロブリンがほとんど存在しないため、細菌やウイルス、寄生虫に対する免疫力が低下し、頻繁に感染症を発症します。以下に、主な症状と診断方法を示します。
症状 | 説明 |
---|---|
反復する副鼻腔および肺の感染症 | 肺炎や副鼻腔炎など、化膿性(莢膜を持つ)細菌による感染が多発します。 |
Giardia lamblia胃腸炎 | 抗体による寄生虫防御ができないため、ランブル鞭毛虫による下痢や胃腸炎が起こります。 |
成長障害 | 感染症による栄養不足や体力低下が原因で、発育不全が見られることがあります。 |
XLAの診断方法
XLAの診断には、主に血液検査とフローサイトメトリーが使用されます。
診断項目 | 特徴 |
---|---|
免疫グロブリン(IgG, IgM, IgA)の低下 | すべての主要な免疫グロブリンの値が著しく低下します(汎低ガンマグロブリン血症)。 |
B細胞の欠如 | フローサイトメトリーでCD19, CD20, CD21などのB細胞表面マーカーがほとんど検出されません。 |
フローサイトメトリー | CD19+、CD20+、CD21+のB細胞が減少していることを確認します。 |
B細胞とT細胞の違い
XLAではB細胞が欠如していますが、T細胞の数は正常です。他の免疫不全症ではB細胞とT細胞の両方が欠如することがあります。以下に代表的な細胞マーカーを示します。
マーカー | 細胞タイプ | 説明 |
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CD19, CD20, CD21 | B細胞 | XLAではこれらのマーカーを持つB細胞が欠如しています。 |
CD4 | ヘルパーT細胞 | T細胞の一部であり、XLAでは通常正常です。 |
CD8 | 細胞傷害性T細胞 | 同じくT細胞の一部で、XLAには影響がありません。 |
CD16 | ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ | NK細胞などの表面マーカーですが、XLAの診断には使用されません。 |
治療
XLAの治療には、欠如している免疫グロブリンを補充することが主な方法です。免疫グロブリン補充療法(IVIG)が行われ、感染症の予防や症状の軽減に役立ちます。また、感染症が発生した場合は、適切な抗菌薬や抗ウイルス薬の使用が必要です。
まとめ
X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)は、B細胞の欠如とそれに伴う免疫不全を特徴とする疾患で、反復する感染症や成長障害を引き起こします。診断にはフローサイトメトリーによるB細胞の欠如確認が重要であり、治療には免疫グロブリン補充療法が使用されます。
XLAの特徴と診断
項目 | 内容 |
---|---|
原因 | ブルトンチロシンキナーゼ遺伝子の変異によるB細胞の成熟不全 |
主な症状 | 反復する副鼻腔・肺感染症、Giardia lamblia胃腸炎、成長障害 |
診断 | 免疫グロブリンの低下、CD19+ B細胞の欠如(フローサイトメトリー) |
治療 | 免疫グロブリン補充療法(IVIG)、感染症に対する抗菌薬・抗ウイルス薬 |