高山病は、高高度(>2,500 m、約8,000フィート)における酸素分圧の低下により引き起こされる病気です。標高が上がるにつれて気圧が低下し、吸入酸素の分圧(PiO₂)も減少するため、低酸素血症が発生します。
高山病の原因と生理学的反応
- 低酸素血症: 高度が上がるにつれて酸素分圧が低下し、肺に取り込まれる酸素量が減少します。
- 過換気: 低酸素に反応して、末梢化学受容体が発火し、過換気を引き起こします。これにより、PaO₂(動脈血酸素分圧)は上昇しますが、同時にPaCO₂(動脈血二酸化炭素分圧)が低下し、呼吸性アルカローシスを引き起こします。
- 赤血球の変化: 低酸素状態に適応するため、赤血球内で**2,3-ビスホスホグリセリン酸(2,3-BPG)**の産生が増加します。これにより、ヘモグロビンの酸素親和性が低下し、末梢組織への酸素供給が促進されます。
- 腎臓の反応: 呼吸性アルカローシスを補正するために、腎臓は**HCO₃⁻(重炭酸塩)**の排泄を増加させ、体液のpHを正常に戻します。また、持続的な低酸素血症に対しては、エリスロポエチンの産生が増加し、赤血球数が増加します。
高山病の症状
- 軽度の症状(急性高山病、AMS):
- 頭痛
- 倦怠感
- 吐き気
- めまい
- 睡眠障害
- 重度の症状:
- 脳浮腫:低酸素血症により脳血流が増加し、浮腫が発生。これにより、嗜眠、錯乱、歩行障害が生じる可能性があります。
- 肺水腫:不均衡な低酸素性血管収縮により、肺血管の圧力が上昇し、呼吸困難や咳、時には喀血が発生することがあります。
生理学的適応と時間経過
- 48時間以内: 多くの人は、腎臓のHCO₃⁻排泄の増加により呼吸性アルカローシスが補正され、症状が緩和します。
- 数日から数週間: 持続的な低酸素血症に対して、赤血球増加症が発生し、酸素運搬能力が増加します。
合併症の予防と治療
- 高山病を防ぐためには、高度へのゆっくりとした適応が重要です。また、重度の症状が出た場合は、酸素投与や降下が必要です。
まとめ
高山病は、高高度における低酸素血症が原因で発生し、過換気や赤血球の適応によって対応されます。適応が不十分な場合、脳浮腫や肺水腫などの合併症が発生することがあります。