酸素運搬と関連する病態

酸素(Oxygen, O2)は、血液中で主にヘモグロビン(Hemoglobin, Hb)と結びついて運搬されます。血液中の酸素量は、溶解した酸素とヘモグロビンに結合した酸素によって決まりますが、溶解した酸素はごく少量であり、主にヘモグロビンと結びついた酸素が重要です。この記事では、酸素運搬の仕組みと、いくつかの病態における酸素の変化について解説します。

酸素運搬の仕組み

血液中の酸素量(CaO2)は、主に次の2つの要因によって決まります。

  1. ヘモグロビン濃度:血液中のヘモグロビンの量
  2. 酸素飽和度(SaO2, Arterial oxygen saturation):ヘモグロビンがどれだけ酸素を運搬しているかの割合

酸素分圧(PaO2, Partial pressure of oxygen)は、溶解している酸素の量を反映しており、酸素飽和度に影響を与えます。以下の表に、いくつかの異常状態におけるPaO2、SaO2、CaO2の変化をまとめました。

病態PaO2SaO2CaO2(酸素含有量)
一酸化炭素中毒(CO poisoning)正常↓(低下)*↓(低下)
シアン化物中毒(Cyanide poisoning)正常正常正常
貧血(Anemia, ↓ Hb)正常正常↓(低下)
多血症(Polycythemia, ↑ Hb)正常正常↑(増加)
高地環境(High altitude)↓(低下)↓(低下)↓(低下)

* 標準的なプローブでは正常に検出されるが、実際には低下している。

一酸化炭素中毒(CO Poisoning)

一酸化炭素はヘモグロビンと強く結合し、酸素の結合を妨げます。このため、PaO2は正常であっても、SaO2とCaO2は低下します。しかし、標準的な酸素飽和度プローブでは異常が検出されにくい点に注意が必要です。

シアン化物中毒(Cyanide Poisoning)

シアン化物は細胞の酸素利用を妨げるため、組織での酸素消費が低下します。しかし、PaO2、SaO2、CaO2は正常であり、血液中の酸素量には影響しません。

貧血(Anemia)

貧血では、ヘモグロビン濃度が低下しているため、CaO2が減少します。しかし、PaO2やSaO2は正常に保たれます。慢性的な血液喪失が貧血の原因となることがあります。

多血症(Polycythemia)

多血症では、ヘモグロビン濃度が上昇し、それに伴いCaO2も増加します。PaO2やSaO2は正常ですが、酸素を運ぶ能力が過剰になります。

高地環境(High Altitude)

高地では、空気中の酸素分圧が低いため、PaO2、SaO2、CaO2が全て低下します。これにより、体内への酸素供給が減少します。

まとめ

血液中の総酸素量(CaO2)は、主にヘモグロビン濃度と酸素飽和度(SaO2)によって決まります。PaO2は、溶解した酸素の量を示し、SaO2に影響を与えます。貧血は、ヘモグロビン濃度が低下しているため、PaO2やSaO2が正常でもCaO2が減少する典型的な例です。


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