筋強直性ジストロフィー(Myotonic Dystrophy, DM)は、DMPK遺伝子におけるCTGトリヌクレオチドリピートの拡大によって引き起こされる常染色体優性の筋ジストロフィーです。この病気は進行性で、筋力低下や筋弛緩の遅延(筋緊張症)を特徴とし、全身にさまざまな症状が現れます。
病因
- DMPK遺伝子の変異: CTGトリヌクレオチドリピートの拡大により、変異型mRNAが生成され、遺伝子の発現が阻害されます。
- 筋肉の異常: 無秩序なT細管が筋力低下を引き起こし、骨格筋塩化物チャネルの機能障害が筋弛緩の遅延(筋緊張症)を引き起こします。
臨床的特徴
- 成人型(クラシック型):
- 進行性の筋力低下: 主に顔、手、足首などに見られます。
- ミオトニア(筋緊張症): 筋肉の弛緩が遅れる症状で、特に手のグリップを離した後に持続的な収縮が見られます。
- 心臓の異常: 不整脈や心筋症などが発生することがあります。
- 白内障や前頭部の脱毛、インスリン抵抗性など、非筋肉性の合併症が見られます。
- 小児型:
- 認知・行動の問題: 小児期に認知障害や行動異常が主な症状として現れ、古典的な筋症状は時間の経過とともに進行します。
診断
- 遺伝子検査により、CTGトリヌクレオチドリピートの拡大を確認します。リピートの長さは病気の重症度と相関し、リピートが長いほど発症が早く重篤化します(遺伝的予想)。
症状の特徴
- 筋力低下: 特に顔や手、足首の筋肉が萎縮します。
- 筋緊張症: 筋肉の弛緩が遅れ、グリップを離した後でも筋肉の収縮が持続します。
- 心臓の問題: 不整脈や心筋症が進行することがあります。
- 消化器症状: 嚥下障害や便秘が見られることがあります。
- その他の症状: 白内障や前頭部の脱毛、日中の眠気などが進行することがあります。
他の疾患との違い
疾患 | 特徴 |
---|---|
ミトコンドリアミオパチー | 筋力低下(例:運動不耐性)、乳酸アシドーシス。母系遺伝。筋緊張症は見られません。 |
染色体欠失(Cri-du-chat症候群など) | 知的障害が主な症状。筋緊張症や白内障は通常見られません。 |
片親性ディソミー(Prader-Willi症候群など) | 認知障害や行動異常が特徴。筋緊張症は見られません。 |
デュシェンヌ型筋ジストロフィー | X連鎖劣性。主に下肢の筋力低下が特徴で、筋緊張症や白内障は見られません。 |
まとめ
**筋強直性ジストロフィー(DM)**は、CTGトリヌクレオチドリピートの拡大によって引き起こされる常染色体優性の遺伝性疾患です。遺伝的予想により、世代を超えるごとにリピート数が増加し、疾患が重篤化・早期発症する傾向があります。小児期には、知的障害や行動の問題が最初の症状として現れ、筋力低下や筋緊張症が続くことがあります。