甲状腺ホルモンとその調節機構

甲状腺ホルモン(Thyroid Hormone)は、体内の代謝やエネルギー消費に重要な役割を果たすホルモンです。甲状腺ホルモンには、主に以下の3つの形態があります。

甲状腺ホルモンの3つの主要形態

ホルモン名特徴
T4(サイロキシン:Thyroxine)甲状腺から分泌される主要なホルモン。循環する甲状腺ホルモンの大部分を占める。
T3(トリヨードサイロニン:Triiodothyronine)最も活性の高い形態。少量は甲状腺から直接分泌されるが、大部分はT4が脱ヨウ素化(Deiodination)されて生成される。
rT3(逆T3:Reverse T3)非活性形態。主にT4から周辺組織で変換される。T3からは生成されない。

甲状腺ホルモンの調節機構

視床下部-下垂体-甲状腺軸(Hypothalamus-Pituitary-Thyroid Axis)は、甲状腺ホルモンの負のフィードバックによって調節されています。この軸では、視床下部(Hypothalamus)甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(Thyrotropin-Releasing Hormone: TRH)を分泌し、それが下垂体前葉(Anterior Pituitary)に作用して甲状腺刺激ホルモン(Thyroid-Stimulating Hormone: TSH)の分泌を促します。TSHは甲状腺に働きかけ、T4および少量のT3の分泌を促進します。

甲状腺ホルモンが血中に増加すると、これが視床下部と下垂体に作用してTSHとTRHの分泌を抑制します。この負のフィードバックにより、体内の甲状腺ホルモンのバランスが維持されます。

機構説明
TRH分泌(視床下部)甲状腺ホルモンが不足すると、視床下部がTRHを分泌。
TSH分泌(下垂体前葉)TRHに反応して、下垂体前葉がTSHを分泌し、甲状腺を刺激。
T4・T3分泌(甲状腺)甲状腺がTSHに応じてT4および少量のT3を分泌。循環するT4は主にT3およびrT3に変換される。
フィードバック(視床下部・下垂体)血中のT4とT3が増加すると、視床下部および下垂体に負のフィードバックをかけ、TSHとTRHの分泌を抑制。

甲状腺機能低下症(Hypothyroidism)と治療

甲状腺機能低下症では、血中のT3およびT4が低下し、TSHが上昇します。治療には、通常レボチロキシン(Levothyroxine:T4合成ホルモン)が使用されます。

T3合成ホルモン(リオチロニン:Liothyronine)もありますが、短い半減期のため、血中T3の濃度が大きく変動しやすく、通常の治療には推奨されません。T4は、体内で必要に応じてT3に変換されるため、より生理的で安定した効果をもたらします。

治療法説明
レボチロキシン(Levothyroxine)合成T4ホルモン。体内でT3に変換され、安定した効果を持つため、甲状腺機能低下症の第一選択治療。
リオチロニン(Liothyronine)合成T3ホルモン。即効性があるが、短い半減期のため血中濃度が不安定になることがある。通常の治療には推奨されない。

まとめ

ポイント説明
甲状腺ホルモンの種類T4(サイロキシン)は甲状腺から主に分泌され、T3(トリヨードサイロニン)はT4から変換される。rT3は非活性形態。
甲状腺ホルモンの調節機構T4とT3は、視床下部および下垂体に負のフィードバックをかけ、TRHとTSHの分泌を抑制する。
甲状腺機能低下症の治療レボチロキシン(T4合成ホルモン)が通常使用され、安定した治療効果をもたらす。リオチロニン(T3)は推奨されない。

甲状腺ホルモンの適切なバランスは、全身の代謝機能に重要です。甲状腺機能低下症の治療では、合成T4ホルモンの補充が最も効果的で安定した治療法です。


投稿日

カテゴリー:

,

投稿者:

タグ:

PAGE TOP