抑うつ気分の鑑別診断

抑うつ気分は誰にでも起こり得る正常な感情ですが、抑うつ症状が一定の重症度や期間を超える場合は、精神疾患として診断されることがあります。ここでは、抑うつ症状を引き起こす可能性のある主な疾患を紹介し、それぞれの特徴を説明します。

主な抑うつ気分を引き起こす疾患

疾患名主な特徴
大うつ病性障害(Major Depressive Disorder: MDD)2週間以上続く抑うつ気分。9つの症状のうち5つ以上が存在すること(SIGECAPS: 睡眠障害、興味喪失、過剰な罪悪感、エネルギー低下、集中力の低下、食欲不振、精神運動の亢進/抑制、自殺念慮)。
持続性抑うつ障害(Persistent Depressive Disorder: PDD、ジストミア)2年以上続く慢性的な抑うつ気分。2つ以上の症状が必要(食欲や睡眠の障害、エネルギー低下、低い自尊心、集中力低下、絶望感)。
適応障害(Adjustment Disorder with Depressed Mood)明確なストレス要因に対する反応として、ストレス要因発生から3か月以内に抑うつ気分が発生。機能障害や著しい苦痛が伴う。
正常なストレス反応(Normal Stress Response)ストレスに対する適切な反応であり、過剰な反応や機能障害を引き起こさない。

鑑別診断の重要なポイント

抑うつ気分の鑑別診断においては、重症度(Severity)期間(Duration)、および機能障害の有無(Functional Impairment)が重要です。正常な感情反応としての悲しみは、これらの基準を満たさない場合、精神疾患としては診断されません。

SIGECAPSの症状チェック

SIGECAPSは、抑うつ症状を評価するための指標です。

症状名説明
S(Sleep disturbance)睡眠障害:不眠または過眠が続く。
I(loss of Interest)興味喪失:趣味や日常活動に対する関心の喪失。
G(excessive Guilt)過剰な罪悪感:自己責任を過度に感じる。
E(low Energy)エネルギー低下:慢性的な疲労感。
C(impaired Concentration)集中力低下:物事に集中できない。
A(Appetite disturbance)食欲不振または過食。
P(Psychomotor agitation/retardation)精神運動の亢進または抑制。
S(Suicidal ideation)自殺念慮:自殺について考えることがある。

まとめ

ポイント説明
大うつ病性障害(MDD)2週間以上続く抑うつ気分で、SIGECAPSの5つ以上の症状が必要。
持続性抑うつ障害(PDD)2年以上続く慢性の抑うつ気分で、少なくとも2つの症状が必要。
適応障害(Adjustment Disorder)ストレス要因に対する反応として、3か月以内に症状が出現。著しい苦痛や機能障害を伴う。
正常なストレス反応ストレスに対する反応が過度でなく、機能障害を引き起こさない。

正常な感情としての悲しみは、ストレスや人生の変化に対する一時的な反応であり、精神疾患として診断されるためには、一定の重症度や期間、機能障害が必要です。


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