心タンポナーデ (Cardiac Tamponade)

心タンポナーデは、心膜腔内に液体や血液が蓄積し、心臓の拡張を制限する緊急状態です。この状態では、心臓が適切に拡張できず、結果的に心拍出量が低下し、ショック状態に陥ることがあります。

項目詳細
原因 (Etiology)– 心膜腔内の血液(例: 左心室破裂、心臓手術後)
– 心嚢液貯留(例: 悪性腫瘍、感染、尿毒症)
臨床所見 (Clinical signs)ベックの三徴候: 低血圧、頸静脈怒張、心音減弱
奇脈: 吸気時に収縮期血圧が10 mmHg以上低下
診断 (Diagnosis)心電図(ECG): 低電圧QRS、電気的交互脈
胸部X線: 心臓のシルエット拡大(急性ではなく亜急性の場合)
心エコー: 右心房および右心室の虚脱、下大静脈の拡張
治療 (Treatment)緊急心嚢穿刺による心嚢液の除去

心タンポナーデのメカニズム

  • 心タンポナーデは、心膜腔内の圧力が増加することで、心臓の右側の低圧室が圧迫され、拡張期の充満が制限されます。
  • これにより、**下大静脈(IVC)**の拡張と、吸気時の収縮が減少します。心エコーで確認できるこの所見は、心タンポナーデの特徴です。
  • **奇脈(pulsus paradoxus)**は、吸気時に左心室の充満が制限されることで、収縮期血圧が10 mmHg以上低下する現象です。

ベックの三徴候

心タンポナーデに典型的な症状である「ベックの三徴候」は以下のとおりです:

  1. 低血圧 (Hypotension): 心拍出量の低下による。
  2. 頸静脈怒張 (Jugular Venous Distension; JVD): 右心房への血液戻りの障害による。
  3. 心音減弱 (Muffled Heart Sounds): 心膜腔内の液体が心音を遮るため。

心タンポナーデの診断方法

  • 心電図 (ECG): 低電圧のQRS波形や、電気的交互脈(QRS波の振幅が一拍ごとに変動)が見られることがあります。
  • 胸部X線: 亜急性の場合、心臓シルエットの拡大が見られますが、急性心タンポナーデでは拡大が見られないこともあります。
  • 心エコー: 右心房および右心室の虚脱と、下大静脈の拡張が見られます。

まとめ

心タンポナーデは、右心房および右心室の拡張期充満が制限されることで、急激に心拍出量が減少し、生命を脅かす状態となります。早期診断と適切な治療(心嚢穿刺)が必要です。


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