左内側橋のラクナ梗塞について

左内側橋(Medial Pons)におけるラクナ梗塞(Lacunar Stroke)では、中小脳脚(Middle Cerebellar Peduncle)のレベルに影響が及びます。特に、三叉神経(Trigeminal Nerve: CN V)が関与する症状がみられ、左側の顔面感覚に影響を与えます。

本記事では、三叉神経やその他の神経に関連する解剖学的構造、梗塞によって引き起こされる典型的な症状について説明します。

三叉神経の解剖と機能

三叉神経(Trigeminal Nerve: CN V)は、中脳(Midbrain)から上部頸髄(Upper Cervical Spine)まで走行し、3つの主要な枝(眼神経、上顎神経、下顎神経)を介して顔面の感覚信号を受け取ります。三叉神経には感覚成分と運動成分があり、感覚成分は顔面の痛覚や温度感覚を伝え、運動成分は咀嚼筋(Masseter, Temporalis, Pterygoids)を支配します。

三叉神経の構造機能
感覚核(Sensory Nuclei)顔面の感覚信号を受け取る。主に眼神経、上顎神経、下顎神経を介する。
運動核(Motor Nucleus)下顎神経を介して咀嚼筋に運動指令を送る。

内側橋梗塞の症状

内側橋の梗塞では、皮質脊髄路(Corticospinal Tract)皮質延髄路(Corticobulbar Tract)が障害されるため、以下のような症状が発生します。

症状説明
対側の片麻痺(Contralateral Hemiparesis)皮質脊髄路の障害によって、対側の運動機能が低下する。
対側の顔面下部麻痺(Lower Facial Palsy)皮質延髄路が影響を受け、顔面下部の筋肉が麻痺する(額の筋肉は影響を受けない)。
構音障害(Dysarthria)皮質延髄路の損傷によって、言葉を話す能力に影響が出る。
運動失調(Ataxic Hemiparesis)小脳への経路が遮断されることで、対側の四肢の協調運動が困難になる。

三叉神経の影響

三叉神経が影響を受ける場合、以下の症状が出現することがあります。

神経症状
三叉神経(Trigeminal Nerve)顔面の感覚異常や咀嚼筋の筋力低下。特に、眼神経、上顎神経、下顎神経に関連した感覚障害。

内側橋の他の脳神経との関係

神経名場所
顔面神経(Facial Nerve: CN VII)橋の尾側で、筋肉の表情や味覚に関与。内側橋の梗塞では、通常はこの神経が直接障害されない。
舌下神経(Hypoglossal Nerve: CN XII)延髄の床に位置し、舌の運動に関与。橋レベルの梗塞では、この神経への影響は少ない。
動眼神経(Oculomotor Nerve: CN III)中脳の上部にあり、眼球運動を制御する。橋の梗塞ではこの神経は関与しない。

まとめ

ポイント説明
内側橋梗塞の主な症状対側の片麻痺、顔面下部麻痺、構音障害、運動失調が見られる。
三叉神経の役割と影響顔面の感覚と咀嚼筋の運動を司り、内側橋で損傷が発生すると感覚や運動に影響が出る。
他の神経との関係顔面神経や動眼神経などは橋レベルの梗塞では直接関与しないが、皮質延髄路の損傷が顔面の運動に影響を与える。

内側橋のラクナ梗塞は、特に運動機能や顔面の感覚に影響を及ぼし、三叉神経や皮質脊髄路、皮質延髄路の損傷によって症状が引き起こされます。


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ:

PAGE TOP