概要
小児成長障害 とは、子どもが年齢相応の身長や体重の成長を遂げない状態を指します。成長障害は、子どもの全身の健康や発育に深く関わっており、特に 低身長 はその兆候の一つです。低身長とは、同じ年齢・性別の集団における 平均身長よりも極端に低い 場合を指し、成長曲線の第3パーセンタイル未満 と定義されます。低身長は、成長に必要なホルモンや栄養、その他の身体的・環境的要因の不足によって引き起こされることがあり、場合によっては医学的な治療が必要です。
低身長の定義と成長の評価
低身長 は、子どもが 同年齢・同性別の子どもたちの平均よりも著しく低い 身長を持つ場合に診断されます。具体的には、成長曲線に基づき、第3パーセンタイル以下 という基準がよく用いられます。例えば、100人の子どもの集団の中で最も背の低い3人に入る場合、その子どもは低身長に該当します。
- 成長曲線: 成長曲線は、子どもの年齢と身長（あるいは体重）をプロットし、全体の集団に対する位置を評価するツールです。通常、出生時から18歳までの間に定期的に成長が記録され、身長が急激に伸びない、あるいは伸びが止まった場合、成長障害が疑われます。
小児の成長のメカニズム
成長は、体内のさまざまな要因によって制御されています。特に重要なのが、成長ホルモン（GH） や 甲状腺ホルモン、性ホルモン などのホルモンです。また、十分な栄養摂取や、骨や筋肉の健康も正常な成長に欠かせません。
- 成長ホルモン: 成長ホルモンは、脳下垂体から分泌され、体全体の成長を促します。成長ホルモンの分泌量が不足すると、成長が遅れ、低身長につながることがあります。
- 甲状腺ホルモン: 甲状腺ホルモンは、代謝や成長に重要な役割を果たします。甲状腺機能低下症では、成長が妨げられることがあります。
- 性ホルモン: 思春期における性ホルモンの分泌は、二次性徴の発達とともに、骨の急激な成長を促します。
低身長の原因
低身長には、さまざまな原因が考えられます。以下に代表的な原因を挙げます。
1. 体質性低身長（体質的な要因）
- 体質的に低身長の子どもは、他の子どもに比べて成長が遅いですが、特に健康上の問題がないことが多いです。このタイプの低身長は 遺伝的要因 によるもので、両親が低身長である場合、子どもも低身長になる可能性があります。
- 通常、思春期の後に身長が伸び始め、最終的には平均的な身長に達することが多いです。
2. 成長ホルモン分泌不全
- 成長ホルモン分泌不全症（GHD: Growth Hormone Deficiency） は、脳下垂体が十分な成長ホルモンを分泌しない状態です。このホルモンの不足によって、子どもの成長が遅れます。
- GHDは、血液検査や成長ホルモン刺激試験によって診断され、治療には成長ホルモンの補充が必要になることがあります。
3. 骨の成長に関する異常
- 骨の成長板に異常がある場合、骨が正常に成長せず、低身長につながることがあります。代表的な例として、軟骨無形成症 や 骨形成不全症 があります。
- 骨の成長に関する異常は、X線検査や遺伝子検査で診断されます。
4. 甲状腺機能低下症
- 甲状腺ホルモンの不足は、成長や代謝を遅らせる原因となります。甲状腺機能低下症にかかると、低身長に加えて、疲労感、寒がり、便秘などの症状が現れることがあります。
5. 思春期遅発症
- 思春期が通常よりも遅れて始まる場合、成長スパートが遅れることがあります。思春期遅発症 の子どもは、同年代の子どもに比べて身長が低いですが、最終的には正常な身長に達することが多いです。
6. 慢性疾患
- クローン病 や 腎臓病、糖尿病 などの慢性疾患は、成長に必要な栄養素の吸収や代謝を妨げ、成長障害を引き起こすことがあります。また、慢性疾患に対する薬物療法が、成長に悪影響を与えることもあります。
7. 栄養不良
- 成長には、十分な栄養摂取が不可欠です。特に、タンパク質、カルシウム、ビタミンD などの不足は、骨の成長を妨げ、低身長を引き起こすことがあります。発展途上国では、栄養不良が原因で成長が遅れることが多いです。
診断方法
低身長の診断は、詳細な身体測定と成長の履歴、家族歴、臨床検査に基づいて行われます。以下の検査や評価が含まれます。
- 成長曲線の評価
- 子どもの成長パターンを成長曲線にプロットし、同年齢・同性別の基準と比較します。急激な成長停止や、同年齢の基準を大きく下回る場合には、さらなる検査が必要です。
- 骨年齢の評価
- 手のX線検査 により、骨年齢（骨の発達度）を評価します。骨年齢が実際の年齢よりも遅れている場合、成長障害の兆候である可能性があります。
- 血液検査
- 成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモン、インスリン様成長因子（IGF-1）などのホルモンレベルを調べるために、血液検査が行われます。
- 成長ホルモン刺激試験
- 成長ホルモンの分泌が不十分かどうかを確認するため、成長ホルモン刺激試験が実施されます。これにより、脳下垂体の機能を評価します。
- 遺伝子検査
- 骨の成長に関連する遺伝的異常が疑われる場合には、遺伝子検査が行われます。
治療方法
低身長の治療は、原因に応じて異なります。特定の医学的な問題が見つかった場合、その原因に対する治療が行われます。
1. 成長ホルモン補充療法
- 成長ホルモン分泌不全 が確認された場合、成長ホルモンの補充療法が一般的に行われます。成長ホルモンの注射により、成長を促進し、最終的な身長を改善します。
2. 甲状腺ホルモン補充
- 甲状腺機能低下症の場合、甲状腺ホルモン補充薬（レボチロキシン） によって、成長を正常化することができます。
3. 思春期遅発症の治療
- 思春期が遅れている場合、医師は適切なホルモン治療を行い、成長を促進することがあります。
4. 栄養管理とサポート
- 栄養不良が原因である場合は、食事の改善や栄養補助剤の使用が推奨されます。十分なタンパク質、ビタミン、ミネラルの摂取が成長を促進します。
5. 慢性疾患の管理
- 慢性疾患が原因の場合は、その疾患を適切に管理することが成長の回復に繋がります。疾患の治療や薬物療法の見直しが行われます。
予後
低身長の子どもが治療を受けた場合、治療の結果次第で成長が改善することがあります。特に、成長ホルモンや栄養補充療法は、適切な管理のもとで効果を発揮することが多いです。遅発性思春期や体質性の低身長は、思春期後に自然に身長が伸びる場合も多く、予後は良好です。
まとめ
小児の成長障害や低身長は、さまざまな原因によって引き起こされることがあり、早期の診断と治療が重要です。子どもが成長曲線から外れている場合、医師の診察を受け、必要な検査や治療を受けることが将来の成長と健康にとって重要です。