概要
低身長 とは、同年齢・同性別の基準に比べて 著しく低い身長 のことを指し、成長曲線で 第3パーセンタイル以下 の場合に低身長と診断されることが多いです。低身長の原因は、遺伝的な要因から成長ホルモンの不足、甲状腺機能の異常、慢性疾患まで多岐にわたり、原因によって治療法が異なります。治療の目的は、適切な成長を促進し、健康的な体格を維持することです。
治療が必要となるケース
低身長の治療が必要になるかどうかは、まずその原因を正確に特定することが重要です。成長ホルモンの分泌不全や甲状腺ホルモンの不足、遺伝的異常がある場合は、治療が必要です。また、治療のタイミングや手段は、原因、年齢、成長パターンによっても異なります。
- 成長ホルモン分泌不全症(GHD: Growth Hormone Deficiency)
- 甲状腺機能低下症
- ターナー症候群
- プラダー・ウィリー症候群
- 慢性疾患や栄養不良
小児低身長の治療法
1. 成長ホルモン補充療法(GH補充療法)
成長ホルモン補充療法(GH補充療法) は、成長ホルモンが不足している子どもに対して、人工的にホルモンを補充する治療法です。この治療は、成長ホルモンの分泌不全や特定の疾患により低身長が引き起こされている場合に行われます。
適応症
- 成長ホルモン分泌不全症(GHD): 脳下垂体の機能が低下し、十分な成長ホルモンが分泌されない状態です。治療は早期に始めるほど効果的です。
- ターナー症候群: 女児の染色体異常で、低身長と発育不全が特徴的です。成長ホルモン療法によって身長の改善が期待できます。
- プラダー・ウィリー症候群: 遺伝性の疾患で、筋力低下、過食、成長障害が見られます。成長ホルモン療法により、成長を促進し、筋肉の発達も助けます。
- 慢性腎不全: 腎機能が低下している子どもは、成長が遅れることがあります。成長ホルモン補充療法が成長促進に効果を示します。
治療方法
- 成長ホルモンは、注射 で投与されます。通常、1日1回、皮下に注射し、これを数年間にわたって継続します。治療の開始年齢や成長の程度によって、最終的な身長は大きく変わるため、早期の診断と治療が非常に重要です。
- 治療の効果 は、通常、数か月後から見られ、子どもによっては急速に身長が伸びることもあります。ただし、定期的に医師の診察を受け、成長の進行状況を確認する必要があります。
副作用
- 成長ホルモン補充療法は通常安全ですが、まれに 関節痛 や 頭痛 などの副作用が見られることがあります。これらの症状が現れた場合は、医師に相談することが推奨されます。
- インスリン抵抗性 や 糖尿病のリスク が増加する可能性もあるため、糖代謝の異常がないか定期的なチェックが必要です。
2. 甲状腺ホルモン補充療法
甲状腺機能低下症 によって低身長が引き起こされている場合、甲状腺ホルモン補充療法 が行われます。甲状腺ホルモンは、成長や代謝を促進する重要なホルモンで、不足すると成長が遅れます。
適応症
- 先天性甲状腺機能低下症: 生まれつき甲状腺の機能が不十分な子どもは、甲状腺ホルモンの欠乏により成長が遅れます。
- 後天性甲状腺機能低下症: 自己免疫疾患やその他の原因によって甲状腺機能が低下した場合、成長に影響が出ます。
治療方法
- レボチロキシン などの甲状腺ホルモン製剤を経口で投与し、不足しているホルモンを補います。この治療により、正常な成長パターンが回復します。
- 甲状腺ホルモン補充療法は、長期にわたって行われる場合が多く、定期的に血液検査でホルモンレベルをチェックし、投与量を調整します。
副作用
- 適切な量でのホルモン補充では大きな副作用は少ないですが、過剰投与の場合、動悸 や 骨粗鬆症 などのリスクが増加することがあります。適切なモニタリングが必要です。
3. 性ホルモン療法
思春期遅発症や、成長ホルモン治療の効果を最大化するために、性ホルモン療法 が使用されることがあります。思春期に性ホルモンが適切に分泌されることで、骨の成長が促進され、身長が伸びます。
適応症
- 思春期遅発症: 思春期の開始が遅れると、成長スパートが遅れ、低身長になることがあります。思春期遅発症の治療では、性ホルモン(エストロゲンやテストステロン)の補充が行われます。
治療方法
- エストロゲン(女児)や テストステロン(男児)を補充し、思春期の開始を促します。これにより、成長が促進され、性徴の発現もサポートされます。
副作用
- 性ホルモン療法には、副作用として 体毛の増加、にきび、気分の変動 などが見られることがあります。定期的なモニタリングと適切な投与が必要です。
4. 栄養管理と食事療法
低身長の原因が 栄養不良 にある場合は、栄養の改善が治療の中心となります。栄養が不足していると、成長に必要なエネルギーや栄養素が不足し、身長の伸びが遅れます。
適応症
- 栄養不良: 貧困や食事の偏りによって栄養が不足している子どもは、成長が遅れ、低身長になることがあります。また、栄養の吸収不良を引き起こす病気(クローン病など)も原因の一つです。
治療方法
- タンパク質、カルシウム、ビタミンD、亜鉛 など、骨や筋肉の成長に必要な栄養素をバランスよく摂取することが重要です。
- 栄養士による指導のもとで食事計画を立て、バランスの取れた食事を心がけます。栄養補助食品を使用することもあります。
副作用
- 栄養管理自体には副作用はありませんが、誤ったサプリメントの使用や栄養の偏りが逆に健康を害する可能性があるため、医師や栄養士の指導に従うことが重要です。
5. 原因疾患の治療
低身長が 慢性疾患 による場合、その疾患自体の治療が成長の改善につながります。例えば、腎疾患や消化器系疾患などがある場合、それを管理・治療することで、成長の促進が期待されます。
治療方法
- 慢性疾患に対する薬物療法や生活習慣の改善が行われます。例えば、腎不全による成長障害の場合、透析や腎移植が必要になることがあります。
- 栄養管理と併用して、疾患管理を行うことで、成長が促進されます。
予後と治療効果
低身長に対する治療は、原因によって異なりますが、適切な治療が行われれば多くの子どもが正常な成長軌道に乗ることが期待されます。成長ホルモン療法や甲状腺ホルモン補充療法は早期に開始するほど効果が高く、最終的な身長の改善が期待できます。また、栄養管理や慢性疾患の管理によっても、成長が促進され、生活の質が向上するでしょう。
まとめ
小児低身長の治療は、成長ホルモン補充療法、甲状腺ホルモン補充療法、栄養管理など、原因に応じたアプローチが取られます。原因が明らかであれば、適切な治療を行うことで、子どもは正常な成長を遂げることが可能です。早期の診断と治療が最終的な成長に大きな影響を与えるため、成長の遅れが見られる場合は、専門医の診察を受けることが重要です。