チアミン(ビタミンB1)欠乏症は、エネルギー代謝や神経機能に重要な役割を果たすチアミンが不足することで起こる病気です。チアミンは糖質をエネルギーに変える過程に不可欠なビタミンであり、特に脳や神経、心臓の健康に重要です。
主なチアミン欠乏症
- 脚気(かっけ)
- 脚気は、チアミン欠乏によって引き起こされる古典的な病気です。主に次の2種類に分類されます。
- ウェット脚気(湿性脚気):心臓や循環器系に影響を及ぼし、心不全や浮腫(むくみ)を引き起こします。
- ドライ脚気(乾性脚気):主に神経系に影響し、手足のしびれや筋力低下、歩行困難などの症状が現れます。
- 脚気は、チアミン欠乏によって引き起こされる古典的な病気です。主に次の2種類に分類されます。
- ウェルニッケ脳症
- ウェルニッケ脳症は、急性の脳障害で、チアミン不足により引き起こされます。意識障害、眼球運動障害、運動失調(バランスが取れない)などの症状が特徴です。早期に治療しないと深刻な後遺症を残す可能性があります。
- コルサコフ症候群
- コルサコフ症候群は、ウェルニッケ脳症の後遺症として発生することが多く、記憶障害や認知障害が中心の症状です。新しい記憶を形成する能力が著しく低下するため、短期記憶がほとんど失われます。
チアミン欠乏症の原因
チアミン欠乏症は、いくつかの要因によって引き起こされます。
- 栄養不足:特に精白された穀物(白米や白パン)を主食とする食事では、チアミンが失われがちです。また、野菜や肉類をあまり摂取しない場合も欠乏リスクが高まります。
- アルコール依存症:アルコールはチアミンの吸収を妨げ、代謝を悪化させます。これにより、アルコール依存症患者はチアミン不足に陥りやすくなります。
- 消化吸収障害:胃や腸の病気、手術などにより栄養素の吸収が阻害されると、チアミンが不足することがあります。
- 妊娠や授乳:妊娠中や授乳中は、チアミンの必要量が増加するため、不足することがあります。
チアミン欠乏症の症状
チアミンが不足すると、次のような症状が現れます。
- 疲労感、倦怠感
- 食欲不振
- 筋力低下
- 手足のしびれ、痛み
- 心拍数の増加
- 呼吸困難
- 記憶障害、混乱
- 歩行困難
これらの症状は初期には軽微なことが多いですが、進行すると生命に関わることもあります。
チアミン欠乏症の診断と治療
チアミン欠乏症の診断は、症状や食事内容、血液検査などで行われます。治療は基本的にチアミンの補充が中心となり、重度の場合は注射や点滴での投与が行われます。
チアミン欠乏症の予防
チアミン欠乏を予防するには、バランスの取れた食事が重要です。チアミンを多く含む食品には次のものがあります。
- 豚肉
- 全粒穀物(玄米、全粒粉パンなど)
- 豆類(大豆、えんどう豆)
- ナッツ類
- 卵
また、過度のアルコール摂取を控えることも重要です。
まとめ
チアミン欠乏症は、食生活の偏りやアルコール依存症などが原因で発症することが多い病気です。初期症状を見逃さず、早めに治療を行うことで深刻な合併症を防ぐことができます。普段からチアミンを多く含む食品を取り入れ、バランスの良い食生活を心がけることが大切です。