ジフテリアについて

疫学

ジフテリアは、豊かな国々では予防接種の普及により稀な病気となっていますが、ワクチン接種が不十分な地域では依然として発生する可能性があります。特に、東南アジアなどで流行が見られます。ジフテリアに対するリスクは、ワクチン未接種や、10年ごとのブースター接種が行われていない場合に高まります。

病態生理

ジフテリアは、毒素産生性のジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)によって引き起こされます。以下のように、主に呼吸器に感染します。

  1. ジフテリア菌が呼吸器に定着する
  2. ジフテリア毒素を分泌
  3. 毒素がEF-2(延長因子-2)のADPリボシル化を介して宿主細胞のタンパク質合成を阻害
  4. 細胞死や壊死を引き起こし、局所および全身に影響を与える

病原菌と毒素

項目詳細
病原菌Corynebacterium diphtheriae
毒素の作用EF-2のADPリボシル化によるタンパク質合成阻害

症状

ジフテリアの症状は、局所的なものと全身的なものに分けられます。

症状分類主な症状
局所的症状偽膜性咽頭炎、頸部リンパ節腫脹(「牛の首」)
全身的症状心筋炎、心不全、神経毒性(神経炎)
  • 局所症状:特に喉に発生する偽膜性咽頭炎が特徴で、広がると呼吸道を閉塞し、呼吸困難を引き起こすことがあります。
  • 全身症状:毒素が血流に吸収されると、心筋炎神経炎が発生し、命に関わることがあります。

治療

ジフテリアの治療は、ジフテリア抗毒素抗生物質が中心です。

治療法説明
ジフテリア抗毒素毒素の作用を中和するために最も重要な治療法
抗生物質感染自体を抑制するために使用

迅速な治療が必要であり、特に抗毒素の早期投与が治療成功の鍵となります。

予防

ジフテリアは、ジフテリア・百日咳・破傷風(DPT)ワクチンで予防が可能です。このワクチンは、ジフテリア毒素のBサブユニットに対するIgG抗体を生成し、毒素の細胞への結合を阻止します。

予防法説明
DPTワクチンBサブユニットに対する中和IgG抗体を生成し、毒素の細胞障害を防止

まとめ

ジフテリア菌は、EF-2をADPリボシル化し、宿主のタンパク質合成を阻害する毒素を産生します。これにより、偽膜性咽頭炎や、全身では心筋炎神経炎などが発生します。ジフテリアは、DPTワクチンで予防が可能で、IgG抗体が毒素を無効化します。


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