ゴーシェ病 (Gaucher Disease) について

ゴーシェ病(Gaucher Disease)は、リソソーム蓄積症の一種で、グルコセレブロシダーゼという酵素の欠損によって引き起こされる遺伝性疾患です。以下にゴーシェ病の詳細をまとめます。

基本情報

  • 疾患名 (日本語 / 英名): ゴーシェ病 / Gaucher Disease
  • 遺伝型: 常染色体劣性

酵素と基質

  • 欠損した酵素 (カタカナ / 英名): グルコセレブロシダーゼ / Glucocerebrosidase
  • 蓄積された基質 (カタカナ / 英名): グルコセレブロシド / Glucocerebroside

基質の蓄積場所

  • 赤血球(RBCs): 赤血球内のリソソームに蓄積します。
  • 肝臓: 肝臓内のクッパー細胞(マクロファージ)のリソソームに蓄積し、肝脾腫(肝臓と脾臓の肥大)を引き起こします。
  • 脾臓: 脾臓内のマクロファージ(リソソーム)に蓄積し、脾腫を引き起こします。
  • 骨髄: 骨髄内のマクロファージ(リソソーム)に蓄積し、骨病変や骨痛を引き起こします。

病型

  1. I型(非神経型)
    • 特徴: 主に内臓の症状が顕著で、神経系の症状は見られません。
    • 症状: 肝脾腫、貧血、血小板減少、骨痛、*エルレンマイヤーフラスク変形。
    • 発症年齢: 幼少期から成人まで幅広い年齢で発症する。
  2. II型(急性神経型)
    • 特徴: 神経系に重度の影響を及ぼし、急速に進行します。
    • 症状: 重度の神経症状、発達遅滞、筋緊張の異常、精神運動障害。
    • 発症年齢: 通常、乳児期に発症します。
  3. III型(慢性神経型)
    • 特徴: 神経系の症状が進行するものの、進行速度はII型より遅いです。
    • 症状: 神経変性、運動障害、発達の遅れ。
    • 発症年齢: 幼児期から青年期にかけて発症することがあります。

主な障害

  • I型: 肝脾腫、骨病変、貧血、血小板減少
  • II型: 神経系に重度の影響(急速な進行)
  • III型: 神経系の変性、運動障害

診断と治療

  • 診断: 血液検査での酵素活性の測定、遺伝子検査で確定診断。
  • 治療: 酵素補充療法(遺伝子組換えグルコセレブロシダーゼ製剤)、対症療法。治療は高価ですが、I型に対しては比較的効果的である一方、II型およびIII型の治療は難易度が高いです。

予後

  • I型: 適切な治療を受けることで、成人まで生存することが可能です。
  • II型: 通常、幼児期から児童期にかけて急速に進行し、早期に死亡することが多いです。
  • III型: 適切な治療を受けることで、比較的長期にわたる生存が可能です。

ゴーシェ病はリソソーム内にグルコセレブロシドが蓄積することで発症します。早期診断と適切な治療が重要です。治療は個別化されることが多く、患者の症状や病型に応じて最適な治療法が選択されます。

*エルレンマイヤーフラスク変形(Erlenmeyer flask deformity)は、骨の形状異常で、特にゴーシェ病や他の骨疾患に見られる特徴です。この変形は、骨の下部が広がり、上部が細くなることで、エルレンマイヤーフラスク(化学実験で使うフラスコ)のような形状を呈します。

特徴と関連疾患

  • 特徴: 骨の下部、特に大腿骨や上腕骨の下端が膨らみ、上部が細くなる。
  • 関連疾患: ゴーシェ病に典型的ですが、他のリソソーム蓄積症や骨の代謝異常(例:Paget病)でも見られることがあります。

この変形は、骨の内部に異常な細胞(マクロファージ)が蓄積することで、骨構造が弱くなり、変形を引き起こすと考えられています。診断はX線検査で確認され、特にゴーシェ病の患者でしばしば見られる特徴です。


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