アルコール性肝疾患(ALD)は、長期間にわたる過剰なアルコール摂取によって引き起こされる肝臓の疾患です。ALDは肝臓の炎症や線維化を引き起こし、最終的には肝硬変に至ることもあります。本記事では、ALDの主な症状、合併症、治療法について詳しく解説します。
アルコール性肝疾患の症状
ALDは以下のような段階を経て進行します:
- 脂肪肝(Steatosis):肝臓に脂肪が蓄積される初期段階です。この段階では症状が出にくく、患者は気づかないことが多いです。
- 肝炎(Hepatitis):肝臓の炎症が進行し、腹痛、倦怠感、黄疸などの症状が出る場合があります。
- 肝硬変(Cirrhosis):肝細胞が破壊され、線維化が進行する最終段階で、肝臓の機能が大幅に低下します。
主な合併症
ALDは肝機能が低下することで、様々な合併症を引き起こします。
1. 門脈圧亢進症(Portal Hypertension)
- 原因:ALDによって肝臓の血流が障害され、門脈圧が上昇します。
- 症状:食道静脈瘤(Esophageal Varices)や胃静脈瘤ができやすくなり、破裂による出血(吐血)が生じます。
2. 脾腫(Splenomegaly)
- 原因:門脈圧亢進症による血流の逆流で、脾臓に血液が過剰に蓄積され、脾腫が起こります。これにより赤髄(Red Pulp)が拡張します。
- 影響:脾腫により血小板の破壊が増加し、血小板減少症を引き起こします。
3. 血小板減少症(Thrombocytopenia)
- 原因:肝機能の低下により血小板が十分に生成されず、さらに脾臓で血小板が分解されるためです。
- 症状:出血しやすくなり、鼻血、歯茎からの出血、または重度の場合は消化管出血などが生じます。
診断方法
- 血液検査:肝機能の指標であるAST、ALT、ビリルビン、アルブミン、プロトロンビン時間などを測定します。
- 画像検査:超音波検査やCTスキャンで、肝臓や脾臓の状態、血流の異常を確認します。
- 内視鏡検査:食道静脈瘤の有無を確認し、必要に応じて治療します。
治療法
1. 禁酒
- アルコール摂取を止めることが最も重要な治療法です。禁酒することで肝臓の炎症が改善し、肝硬変の進行を遅らせることができます。
2. 栄養療法
- 栄養不足がある場合、ビタミン(特にB群とK)やミネラルの補給が推奨されます。
3. 薬物療法
- 食道静脈瘤の破裂予防のため、βブロッカー(Beta Blocker)などの薬剤が処方されることがあります。
- ALDによる炎症を抑えるために、コルチコステロイドが使用される場合もあります。
4. 手術・処置
- 内視鏡的治療:食道静脈瘤の結紮(Ligation)や硬化療法(Sclerotherapy)を行い、破裂を防止します。
- 肝移植:重度の肝硬変で、他の治療法が効果を示さない場合に検討されます。
まとめ
アルコール性肝疾患は、長期間のアルコール乱用によって肝臓が損傷し、進行すると深刻な合併症を引き起こすことがあります。禁酒と早期の医療介入が肝臓機能の改善につながり、合併症のリスクを軽減します。ALDが進行した場合、内視鏡的治療や肝移植が必要になることもありますが、早期の予防と管理が症状の悪化を防ぐ鍵となります。